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色々と買って保冷効果のあるバッグに入れて貰い、店を出る。
と、自動ドアをくぐり抜けた瞬間 背の高い人とぶつかりそうになってしまった。
危なっ、ルカリオが引っ張ってくれなかったら正面衝突してたよ!

……だけどその人物へ視線を向けた瞬間、私は硬直してしまう。


「すまない、大丈夫か?」

「……あ、……はい……」


その人物は長い金髪をポニーテールに纏め、着ている服はシンプルながら体のラインが浮き出るセクシーなもの。
足にぴったりとフィットしたボトムが長さと細さを強調している。
女でもはっとしてしまうような超ド級の美女が、そこに居た。
動けずに見つめていると、美女が怪訝な表情をする。
気付いたピカチュウが私の頭を軽く叩き、代わりに美女へ話し掛けた。


「ごめんなさい、こちらこそボケーッとしちゃってました。お姉さんが美人だから見とれてるんです、この子」

「ふふっ、口が上手いな」


美女……サムス・アランが微笑む。
切れ長の瞳はキツい印象を与えるのに、その微笑みは花が零れるようで。
うわわそんな趣味無いのに顔が赤くなりそうだ!

そうやってサムスから目を離せないまま呆然としていたら、頭上のピカチュウにもう一回軽く叩かれたので、我に返って慌てて謝罪。
サムスは 気にしないでくれ、と軽く言うとそのまま店の中へ入って行った。
……チョコ好きなのかな。ちょっと意外かな? サムスの好みが全く分かんないや。

いつまでも入り口に居ると邪魔なので移動し、少し離れた場所の壁際に寄ってほぅ、と息を吐いた。


「すっっっっごい美人だった! マルス見た? 見たよね? あー緊張したー!」

「ほんと……見掛けは派手なのに落ち着きがあって素敵な人だったね」


ふいーうマルス様からもお褒めの言葉を頂きましたー! 私が褒められた訳じゃないけど喜んどこう。
思いがけない任天堂キャラとの遭遇にテンションが上がった、と同時に下がった。
結果プラマイ0だった……いや、私にとってはマイナスか……?

さてさて、今のサムスさんまで革命家という事はあるのだろうか。
今までに会った任天堂キャラの革命家は4人、マリオ・ピーチ・フォックス・ファルコ。
恐らく違うと思われるのが6人、リンク・ロイ・マルス・ピット・ネス・リュカ。
違うと思いたいけど何か怪しいのが3人、ロボット・ルイージ・ポケモントレーナー。
革命家ではなく逆に政府側なのが1人、アイク。
正体が何だろうが完全に信頼してるのが2人、ピカチュウとルカリオ。
ルカリオを信頼するのはまだ早いかもしれないけど、もう私が異世界人だと知られている以上は安心だと思いたい。じゃなきゃキツすぎる。

まあもう会う事も無いだろうし気にしなくてもいいや。
またサムスに会う事があってから色々と考えればいいよね。

それから、少々マルスに遠慮しつつも買い物を満喫させて貰った。
何となく服屋には入り難かったので入ってないけど、それでもお土産物屋を中心にあちこち回れて楽しくてしょうがない。
次はステップストアとピット達へのお土産にお菓子でも買おうかと思ったら、マルスの市民証に着信が。


「ごめん、ちょっと出るね」

「どうぞー」


市民証を取り出し通話を始めるマルス。
友達かなー、と思っていたら彼が盛大な溜息を吐く。
やれやれといった体で首を振ると、市民証から顔を話しこちらへ向いた。


「コノハごめん、リンクさんが、ロイが買い物でハイになって終わりそうにないから止めに来てくれって」

「また長々と買い物してるのか……分かった、行こう」

「いや、僕だけで行って来るよ。ロイを止めたらすぐ戻って来るからさ。コノハはお土産でもじっくり選んでて」

「そう? じゃあそうさせてもらおうかな」


お土産選ぶのかなり時間かかりそうだしね。実は私もロイの事あんまり言えなかったりする。
マルスを見送って、ピカチュウやルカリオと一緒にお土産選び。
あれが良いかな、いやこっちも良いかな、何個入りかな、と迷っていたけれど、ふたりのアドバイスもあってそんなに時間が経ってない。選んでたのは10分ちょっとかな。
マルス達を待とうと店を出て近くにあったベンチに座っていると、更に5分後くらいにマルスから着信が。


「やっほーマルス、ロイの買い物終わった?」

『それがさ、少なく見積もってもあと30分は終わりそうにない……』

「うおぉ、マジで?」


買い物始めてから2時間は経過してるぞ。
まあ私も買い物なら長時間やってられるから気持ちは分かるんだけどさ、なんていうか意外っていうか。以前の事で知ってはいたんだけど。
コノハはどうする、と訊かれて、ふと思いつく。


「分かった、気にしないでいいよー」

『了解。こっちも終わったら連絡するよ。なるべく早く終わらせるから』

「大丈夫だって、実は私もまだ買い物終わってないんだよね。終わったら連絡するからごゆっくりどうぞー」


言って、市民証を切る。
そしたらピカチュウが、どういう事? と訊ねて来た。


「もう買い物終わったじゃない。何か買い逃し思い出した?」

「違う違う! 外、奥の方に観覧車あったでしょ、乗ろうかと思って!」

「ああ……後で皆に乗ろうよって言えばいいのに」

「時間あるか分かんないし、言い出し難いかもしれないじゃん。念のため乗っときたい」


まあピカチュウもルカリオも反対したい訳じゃないので、特に意見も無く観覧車へ向かう。
モールの建物を出て、緑なんてどこにも無い遊歩道を数分ほど歩いた先にあった観覧車は、思った以上に大きい。
一周30分程度、高さは約180m、ゴンドラも私が知っている観覧車よりだいぶ大きくて、直径3mくらいの球体になっている。
ほんっと大きいなおい。ゴンドラがちょっとした部屋みたいなサイズになってるぞ。

乗り場に近付くと入場ゲートがあって、横には係員さん。
グランドホープには無いけど駅の改札に似てる。あれに市民証を翳せば通れるみたい。
ペットも同乗可、ピカチュウとルカリオもOKだね。
ピカチュウ達も人間の半額だけど料金が必要みたいだし、ゴンドラ1つ貸し切りにしようかな。


「ゴンドラ1つ貸し切りは1000か……あれ?」

「コノハ様、あの者はさっきの」


入場ゲートから少し離れた所に、目を見張らんばかりの美女。
ゲートの方を見ていてまだこちらには気付いていないけれど、近寄って行ったらちらりとこちらを見て、一瞬目を見開いた後に微笑みながら話し掛けて来た。
うーん、やっぱり目の保養ですなサムス姉さん。


「さっきの……また会ったな。観覧車に乗るのか」

「はい。お姉さんもですか?」

「ああ、乗りたいんだが、一人で乗るのもどうかと思っていたんだ。もし良かったら一緒に乗らないか? ゴンドラ1つ折半しよう」

「いいんですか!? 乗ります乗ります!」


  


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