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リンク達はゼルダ姫との再会も喜んでいた。
まあゼルダ姫の方は記憶が戻ってないから初めは戸惑ってたみたいだけど、嬉しそうな雰囲気に絆されてすぐ笑顔になった。
お互いに現状を話し合い、結局は待機しか出来ない事を確認する。
それにロイが露骨にガッカリした様子。


「あーあー、せっかくオレが華麗に活躍するチャンスだったのになー」

「不謹慎だぞロイ、危険が少ないならその方が良いじゃないか」

「何だよマルス、お前はヒーローに憧れないのかよ。オレは憧れるね! 颯爽とヒロインを守って悪を倒して、英雄になるんだ!」


おおう、ロイってばそんな夢主になりたいみたいな願望あったんだ。
男の子なら一度は夢見るヒーロー願望ってやつなんだろうか。
惜しむらくはそのヒロインに相当しそうなのが、今のところ私のような平々凡々女しか居ないって事だ。
いずれ可愛いヒロインが現れるといいね、リリーナみたいな。
ってかリリーナ居ないのかな。任天堂ってよりスマブラって感じの世界だから居ないのかな。


「僕達これまで普通の学生だったろ? いきなりそんな英雄だとか勇者だとか、なれる訳ないじゃないか」

「夢がねーなぁマルスは。それに普通の学生だったのはこれまでの話! 今は神様から力を貰った守護戦士の生まれ変わりだぜ!」

「そういうのに憧れる気持ち、分かるよ」

「お、コノハは分かってくれるんだ。お前ももしかして そういう願望ある?」

「まーね。魔法使ってみたいとか、特殊能力が欲しいとか、美少女になって何かの大きな出来事の中心に居てみたいとか、そういう願望あるなぁ」

「だよなー、特殊な人物になってみたいよなー」


っていうかここに居るの、私を除いて世界の中心人物ばっかりじゃん。
主人公とかヒロインばっか。
まあ原作ゲームの方とは関係無いみたいだから言ったって無意味だし、そもそも言える訳ないけど。

そんな事を思っていたら、リンクが一言。


「だけどコノハはもう、このグランドホープの中心人物だろ」

「へっ? な、なに言ってるんですか、そんな訳ないでしょ。昔の王国の王妹殿下の孫娘って血筋だけで、特に何の出番も役割も無いし」

「前にも思った事なんだけどな」


この革命は私の死がトリガーとなって引き起こされた。
特にグランドホープで強大な力を持つアイクは私の死によって考えを変え、レジスタンスに協力を決めた。
これはとてつもなく大きな変化だろうとリンクは言う。
それに関して、シュルクが神妙に頷いた。


「それは思うよ。戒厳令が敷かれたのにシェリフの警備も監視も、何も無い……ジェネラルインストールが抑えてるんだ。彼はカリスマ的な絶大な人気があるからね」

「政府とシェリフって管轄が別なんでしたっけ」

「多くはね。この分だとシェリフはきっとレジスタンスの邪魔もしていないだろう。革命の成功率がだいぶ上がってるはずだ」

「俺達だって、お前が居るから戦う事を決めた。コノハはまるで運命を切り替えるスイッチみたいだな」

「私も同じだコノハ。今こうして政府と戦っているのはお前が居るからだ」

「サムスさんまで……」


そんな事を言われて頬が紅潮するのが分かった。
ちょっと心臓が高鳴り始めて少しだけ息苦しくなる。
私自身が中心人物かは微妙だけど、物事の中心に居るべき人物達に影響を与えられるだけの役割はあったんだ。
必要不可欠ではないけれど、居た方が物語が盛り上がると言った所かな。

うわ今セレナーデみたいなこと言っちゃったかもしれない……。
みんな命を賭けて真剣に戦ってるのに、物語だの何だのはちょっと不謹慎だ。

と、そこで突然倉庫の外から物音。
シュルクとルフレが一瞬で反応して飛び出して行き、リンク達も後を追う。
サムスが私を庇うようにして銃を構えた瞬間、外からロイの声。


「こんな時に亜空軍かよ!」

「亜空軍……!?」


何故かグランドホープの人々をどこかへ連れ去り、暫くして返すという謎の行動をしている機械仕掛けの兵士達。
スマブラXのストーリーモード、亜空の使者に出て来るあいつらだ。
あ、亜空の使者の事を考えたらマナを思い出した。
最後に別れた時、今度の休みに亜空の使者2人プレイしようって約束したんだ。

『明日の休み、あんたん家行くからスマブラしよっ! 二人プレイで亜空の使者ぶっ通しな!』

あー何か思い出したらまた泣けて来た。
死んでしまった私は多分、元の世界には帰れないんだろう。
お父さんにもお母さんにも、マナにもケンジにも、他の友達にも、皆にもう会えない。

悲しくても辛くても受け入れなくてはいけない。
こうして死んだ後も活動できるだけで有り難いんだから。
元の世界の事で泣きたいなら、レジスタンスの革命が成功して、それから思い切り泣けばいい。
今は自分と自分を守ってくれる皆の事を考えて行動しないと。

ルキナが少し慌てたようにゼルダへ話し掛ける。


「亜空軍出現の警報サイレン、鳴りませんでしたよね?」

「鳴っていませんわ。停電の影響でしょうか……」

「シェリフや政府がそれどころじゃないから、ってだけでは……」


私がそう口を挟むと、二人は首を横に振った。
亜空軍はグランドホープのどこにでも現れるため、警報サイレンは各地で別々に管理しているらしい。
万一政府やシェリフが機能しなくなっても動くので、停電の影響としか思えないという。


「それか……何者かが鳴らぬよう細工したか、ですね」

「細工……」


今までそんな細工しなかった(らしい)のに急にそんな事をするメリットは分からないけど、そのぐらいしか考えられないって。
ちなみにもちろん警報サイレンにも万一の停電時に備えて予備電力があるのに、それも機能してないらしい。

1つしか無い倉庫の入り口からルフレが顔をこちらへ出して来た。


「籠城できそうだ、壁を壊して侵入して来る可能性もあるから周囲に警戒してて!」

「りょーかい!」


カービィの声は相変わらず高くて可愛らしいけれど、こういう時は真剣さを感じ取れる。
すぐにルフレが扉を閉めて外へ戻り、聞こえて来る喧噪の音がくぐもる。
私も銃を構えて周囲に警戒していたものの、やがて騒ぎが静まった。
それから少ししてリンクとシュルクが倉庫に入って来る。
どうやら出番無く終われたみたい。


「ふーっ、政府ばっかり警戒してたから予想外だった」

「まさかこんな時に亜空軍なんてね……」


そう言えば亜空軍に関して、政府の差し金じゃないかと思った事があったなあ。
亜空の使者で亜空軍に荷担していたファミコンロボットが政府の所属みたいだし、もしその私の予想が当たっていたら……。
サイレンを鳴らさずに襲って来た亜空軍……まさか、私の居場所バレてる?

一応籠城し易い場所みたいだから、このままここに居るつもりだけど……。
なんて考えていたら、どこか遠くから凄まじい轟音と地響き。
何これ地震!? と思って側のサムスにしがみ付いていたら地響きが定期的に続くようになり、轟音の方も時折響いて来る。
この轟音、何かの鳴き声のようにも聞こえる。


「ちょ、っと、外に出てみませんか!?」

「そうだな、さすがに異常事態だ」


言って倉庫内の全員で出ると、外に残っていたロイ達が原因を探っている所。
それなりに遠くから聞こえたので近辺じゃないだろう。
相変わらず地響きは継続していて、次いでもう一度聞こえる轟音。
私の頭に乗っているカービィがハッとした様子でどこか一方を見た。


「……北!」

「北?」

「たぶんグランドタワーの方!」

「グランドタワー? まさかレジスタンス達に何かあったの!? 見える所まで行ってみよう!」

「それならこちらです!」


ルキナの案内で倉庫が密集している地帯を北へ抜ける。
すると遠くに見えるグランドタワーの方に巨大な砂埃のようなものが蔓延しており、それがこちらへ向かって伸びているような……。
この近辺は広大な道路で周囲は開けているけど、グランドタワー周辺はビル群の為よく見えない。


「あーもう何が起きてんの……!」

「……なにか、来る」


カービィが呟いた一言に全員がハッとする。
そう言えばさっきから継続してる地響き、段々と近付いて来るような……?

思った瞬間、この開けた地形にビルの合間から何かが飛び出して来た。
禍々しい気配を纏った巨大な……え、これって……。


  


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