宇宙旅行
男はもがく。
自らの危機から脱するために、もがく。
もがいて、もがいて。
椅子に縛り付けられた身体を、目隠しを、外そうとする。
その姿を、小首を傾げて見ている一人。
…いや、一人と呼ぶのはおかしいのかもしれない。
正確には…一匹。
身体の右半分が白色で無垢な表情を浮かべていながら、左半分は黒色で、邪悪な表情な、変わったクマのぬいぐるみ。
それが、男が「絶望」する瞬間まで、もがいている姿を見ているのだ。
すると、そのぬいぐるみは、突然大きく腕を振り上げると、木槌でベルを鳴らした。
その瞬間…男の「絶望」は始まった。
男は扉の開いたロケットに吸い込まれる。
悲鳴を上げるが、逃げられない。
そのままロケットに乗らされ、扉が閉まる。
そのロケットは、建物の天井と床を幾つも突き破り…大気圏さえも突き破り…宇宙に飛び出る。
そして、ロケットは…墜落へのカウントダウンを始める。
男を乗せたまま。
宇宙でスピードを失ったロケットは、そのまま地球に向かって落下する。
火をまといながら。
そして、物凄い爆発、爆風、音と共にロケットは墜落した。
ぬいぐるみが見ている、目の前に。
そこで、ロケットの扉が開く。
…中の男は、骸骨と化していた。
逃げられない「絶望」の中で、燃え尽きて死んだのだ。
ぬいぐるみは、笑う。
まるで、「絶望」を喜んでいるかのように…笑う。
「うぷ…うぷぷ…うぷぷぷぷぷぷ…」
ただ、ぬいぐるみの笑い声だけが響いた…。
これが、物語の始まり。
「超高校級」の天才たちの、「希望」と「絶望」の物語。
ーおしおき≪宇宙旅行≫:???ー