Encounter


ここは────どこでしょう────?



グルグルと景色が回って気持ち悪いです…早くここからでないと────








***





「───伊月!見回りの時間だ 行くぞ」

「そう急かすなって日向 ハッ急かす瀬かっ!ktkr」

「きてねーしそれ無理ありすぎだから!」




日向と伊月はいつものように仕事服に着替え見回りをしに外へ出た。
結成二年の誠凜は他の強豪組合と違って大きな仕事がなかなか入ってこない。それ故些細なことでも逃すまいと見回りをしているのだ。





「もっと人手足りてたら楽なんだけどなぁ…」

「ダァホ 人がいようがいまいが俺達にでかい仕事なんてそうそうこねーよ」

「でもさ、一年前はいいとこまでいったじゃないか」

「…あの時はアイツがいたからな」

「アイツは必ず帰ってくるんだろ?なら俺達にできることは信じて待つ、そうじゃないか?」

「それだけじゃねーよ 俺達も強くなってアイツが帰って来たときに心配させねーようにしなくちゃならねえ!」

「───そうだな んじゃ今日も張り切って"視る"としますか」

「ああ、頼む」





そう言っていつものように伊月が鷲の目を使おうと
集中した瞬間







ぐにゃり




と、空間が捻れたような感覚が伊月を襲う。








「!!? はっ…なんだ、これ…!」

「! 伊月?!」





突然伊月が目を押さえうずくまる。




「伊月!どうした!? 何が"視えた"?!」

「ひゅ、が…う、上…」

「上…?」




そう言い日向が上を見上げると────



黒い渦が突然二人の頭上に現れた。




「…は? んだよこれ…」

「ひゅう、が…これの奥からすごい邪気が…」

「んだと?! やべえ、一端距離置くぞ!」




日向が伊月を背負い距離を置こうと走り出す。

が…




ヒュン ドサッ





走り出す前に二人の上へ何かが落ちてきた。
当然背を向けていた二人は落ちてきたのがわからず下敷きになっている。



「うっ…ってぇな 一体何なんだ!?」「日向…とりあえず上のをどかそう 動いていないみたいだし」

「だな っと… ってお、おい!!」




日向と伊月が見たもの…それは─────









────傷だらけの色素の薄い獣の耳がついた少年










「なんで…いきなり…?」

「! 日向!あの渦がなくなってる!!」




なに?!っと上を見れば先ほどの黒い渦は小さくなり消えてしまった。




「じゃあまさかこいつはあの渦から出てきたってことかよ…!」

「そうだろな…彼から黒い渦の邪気が少し残っている …日向?」




無言の相方を不振に思い、顔を見ると心なしか何かを堪えているようにプルプルしている。




「…日向?」

「…なあ これって猫の耳だよな?」

「そうだな 犬にしてはピンと立っているしどう見ても本物だ…ってまさか!?」

「…ああ、こいつはおまえと同じアヤカシ混じりのハーフだ しかも猫!!」

「なん…けど日向!猫のハーフとかそうそういないはずじゃ…」

「そうだ…猫のハーフなんて狐並に稀少 だが目の前にいる少年はどう見ても猫耳と尻尾がある」

「…まさか昨夜の帝光襲撃となにか関係が…?」

「わからない…が、一つわかったことがある」

「本当か日向?!」




驚いて日向の方を向くと


 

「いいか…こいつは獣化したら絶対子猫だ!」




と一拍置いて自信満々に言い切った。




「…はぁ?」

「いや、別に子猫じゃなくても絶対可愛い!!これだけはわかる!!」

「いや、ちょっと待って日向落ち着けって ていうかわかったことってそれ?!」

「伊月、これは大事なことだ!見ろあの色素の薄さを!間違いなく儚い系可愛い猫に決まっている!!」

「いやだからどんな猫とかはもういいか「決めた、連れて帰るぞ」って へ?」




突然の日向の決断に戸惑う伊月




「ちょっ、日向!素性もわからない奴を連れて帰るのか?!」

「ならこんなボロボロな状態で放っておくのか?」

「いや、それは… でももし悪い奴だったらどうすんだよ!俺達は小編成なんだぞ?襲われたら
壊滅は免れない…!」

「いや、こいつは大丈夫だ」

「!!」




さっきの取り乱しはどこへ行ったのやら、真剣な…それでいて優しい目で横たわっているハーフと想われる少年を撫でながら日向は続ける。




「こいつからは悪意は感じない それどころか何かに怯えているような気がするんだ」

「それって…」

「多分アヤカシから逃げてきたんだろう この傷はその時のものだろな …一人で怖かったんだろう」

「…」




悲しげな目を浮かべながら日向はそっと少年の頬を撫でる。
伊月は少し考え、よしっと言うと少年を抱えた。




「い、伊月?!」

「なんだよ日向、連れて帰るんだろ?」

「いや…だってお前反対してたじゃねえか」

「日向が大丈夫って言ったら大丈夫だと思えてきたからな それに早いこと手当してやらないと」

「…! そうだな───」




呆気にとられながらも日向はやんわり微笑み伊月と少年を連れて元来た道を帰って行った。







もぞりと動く背後の影に気づかずに────…





(おい伊月、俺が持つ)
(えーやだよ 俺が最初に見つけたんだから)
(なっ…お前反対してたじゃねえか!!)
(過ぎたことじゃないか…ハッ桐と杉を切りすぎた!ktkr!)
(うるせーダァホ!!! ゴンッ)
(ったぁ〜 痛いじゃないか日向!彼が落ちたらどうするんだ!)
(俺が代わりに連れて帰る お前は埋まっていろ)
(ひどくない?!)





この日を境に波乱の嵐に巻き込まれるのを、二人はまだ知る由もない…


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