The promise of reunion
─────強かに打ちつける雨
それは非情にもボロボロな彼らの体力を奪ってゆく。
傷だらけの体に鞭打ち必死になって霊山と呼ばれていた山を駆けていた。
そんななか数多の異形な姿をしたアヤカシが八つの影を追いかける。
「はぁっ…はぁっ… っ!ま、まだ追ってくる、っすよ!」
「そりゃ…奴ら、も必死だから、な」
「だがっ…みすみすやられるわけには、いかないの…だよっ!」
「はぁ〜もうめんど、くさ…とっとと諦めてくれたらいいっ、のに」
「拠点地潰したんだ、からもう満足だろがっ…!」
「きっと…僕達の体力切れを、狙っているんだろう…全く嫌になる、ね… テツヤ、さつき、大丈夫か?」
「…はっ…はぁっ…」
「テツっ!」
「…一度止まろうか さつきもしんどそうだ」
「す、すみません…」
「ごめんね、赤司君…」
「謝ることはないさ ずっと走りっぱなしだったんだ、少し休もう」
赤司の提案に八人は近くにあった洞窟に身を隠す。
***
「これからどうするのだよ?」
緑間が眼鏡を拭きながら外を警戒している赤司に訊ねた。
「そうだね…遅かれ早かれここにいては気づかれる …テツヤ?」
どうしようかと考えていると黒子が俯いているのを見つける。
その姿に意味を理解した赤司は黒子の元へ行き宥めるように頭を撫でた。
「…テツヤ、お前のせいではないよ」
「…ですがっ、僕がこんな体質でなければみんなを巻き込むことはなかった…!」
「その体質に僕らは助けてもらってる だから謝ることはないさ」
「で、も…!」
「テツヤ、僕達は仲間だ。それも深い絆で結ばれた─── 仲間の為なら命をかけて守る、そうだろう?」
赤司の問いに残りの面々は口々にそうだと発言する。
「───誰一人迷惑だなんて思っていないよ それともテツヤは迷惑と思っているのかい?」
「!まさか!!そんなこと思ったことありません!!」
「なら巻き込むこんだとか思うんじゃない」
「はい…すみません…」
**
「テツの説教はすんだけどよ、これからまじでどーすんだ?」
「今出てもアヤカシ共がいるもんね〜あーやだやだ」
「どうにかしてこの山から離れねぇとな…」
「そのことなんだが、みんなこれを見てくれ」
そう全員を促すと赤司は洞窟の地面にある一つの岩をどけた。
するとそこに黒い渦が現れる。
まるでそれは"闇"のようで徐々に周りの石を飲み込んでいた。
「うわっ!これなんすか?!」
「ブラックホールじゃねぇか…!!」
「…赤司、まさかこれは…」
「真太郎は知っていたか」
「当たり前なのだよ まさかこんなところにあるとは…」
「おいセイジューロー、俺達にも説明しやがれ 全然ついていけねーよ」
しびれをきらした灰崎がイライラしたように黒い渦を聞く。
それを見た赤司は目を丸くして知らないのか?と、首を傾げる。
「いや、知らねーから聞いてるんだろ!」
「それもそうだな」
「赤司…時間がない 早く説明するのだよ」
緑間に急かさればつが悪そうに灰崎、青峰、黄瀬を見て説明し出した。
「これは一種の空間転移装置だ。この霊山のどこかにあると聞いていたので探 していたんだよ。大人数を転移させることができる優れものなんだが全員が同じ場所にどこに飛ぶかわからないのが難点だが」
「まじっすか!!ならこれで逃げれるじゃないっすか!!」
黄瀬が嬉しそうに尻尾を振る。
「…けどよ、敵地のど真ん中に飛ぶかもしんねぇんだろ?」
「しかもバラバラになるんでしょー?それ危なすぎるじゃん」
目の前の希望の渦が絶望の渦と成りうることを知り、全員が顔を曇らせる。
と、その時
「!! あ、赤司君!敵がすぐ近くまで来ています!!」
黒子が叫んだ。
その直後
ドガーン!!
と爆音が洞窟内に響く。
そしてアヤカシが三体、ビチャッビチャッと雨に濡れた体を引きずりながら入ってきた。
今まで彼らにつけられた生々しい傷が痛むのか足取りかふらついている。そして傷付けられた怒りで両腕の刃をギリギリと擦りあわせ八人の元へ一歩、また一歩と歩み寄ってくる。
「っ…!」
「テツっ!」
襲撃と刃の音に怯んだ黒子を抱え青峰は黒い渦の近くへ走った。
他の者も渦の近くへ来ている。
「ちっ…ここまでかよ…」
「俺、もう戦えないっすよ…」
「赤ちん…」
「赤司君…」
ジリジリと距離を詰められ絶体絶命と誰もが思った時。
「みんな…飛び込むぞ」
赤司が意を決意したように全員に呼びかける。
「「?!」」
衝撃的な発言に青峰と黄瀬は目を丸くして発言主を見る。
「本気ッスか!?敵地に飛ぶ可能性あるんスよ?!」
「だが今この状況を打開するにはこれしかない」
「でも…!」
「涼太、気持ちはわかる。だが今ここで抵抗できぬまま殺されるか僅かでも希望があるのにかけるか…どちらが得策だと思う?」
「…」
「何も必ず敵地ど真ん中に行く訳じゃない。僕が行くと言ったら"必ず全員が安全な場所に行く"んだ」
ニヤリと不敵な笑みを浮かべながら"云う"と黄瀬は呆気にとられながらもどこか心の不安がなくなったように感じた。
(流石、言霊使いッスね)
黄瀬だけでなくその場にいる全員が不安を感じなくなった。
その様子をみた赤司は今度は優しく微笑むと
「───"必ず生きてまた会おう"」
そう言いその言葉を合図に八人が黒い渦へと飛び込んだ─────
そして黒い渦は飲み込んだ後八人を守るようにシュルル…と消えてしまった。
It can meet again…