春。
それは終わりの季節でもあり、別れの季節でもあり。
…始まりの季節でも、出会いの季節でもある。
ジリリリリ、とベルの音が静寂を破る。
遮光カーテンの隙間から漏れる光は、春の朝の陽光で、フローリングを暖める。
ベッドの上、布団の中から伸びたのは、この部屋の主のまだ幼さの残る小さな手。
的確に目覚ましのベルを止め、再び部屋に静寂をもたらす。
「………ぅ、…もう朝……。」
布団の中でもぞもぞ、と動いた後、まだ寝ぼけた頭で時間を確認する。
「……………!!」
その瞬間、がばっと飛び起き、辺りを見回す。
「あかん、入学式やのに遅刻してまう!」
弥生は、慌ただしくバタバタと階段を降りていった。
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