この恋、使い捨て?@


(弥生side)



…また、雅治がいなくなった。

「雅治ー?どこー?」


元々、飄々としてる彼だけど、時々誰にも言わずに、ふらっと姿を消してしまうことがある。

そんなとき、決まって。


「もうっ!またここにいた!」


ガチャリ、屋上のドアを開けた先に、彼はいる。

授業をサボって、また、ここで。
何をするわけでもなく、ただ…空を眺めて。


「なんじゃ、弥生か…柳生かと思ったぜよ。」

「そんなにご希望なら柳生君呼んで来ましょうか雅治?」

「やめてくんしゃい…柳生のお説教は遠慮したいナリ。」

「だったら時々ふらっといなくならないでよ…はぁっ…。」

「それは無理な相談じゃの。
俺は詐欺師じゃき、飄々としとるんが性に合っとるんじゃよ。」

「…詐欺師のくせに、そんな悲しそうな目で無理に笑うのね。」

「………。」


ほら、またこの顔。

この悲しそうな顔で、彼はいつも空を眺めてる。


「…雅治はいつもそう。
1人でいるときはいつも、そんな顔する。」
そのときは、いつも。


「…私を見ては、くれてないでしょ?」

「……………ふっ、そんなことないぜよ?
俺は弥生を愛しとるきに。」


そうやって、偽りの愛を私に囁く。
まるで、心の痛さを紛らわせるための薬のように。


「…嘘はもう聞き飽きたわ。
詐欺なんて、要らないのよ!」


パシン!
私は力一杯、雅治の頬を叩く。


「………っ!
何するんじゃ弥生!」

「バカにしないでよ!
私のこと何だと思ってるの?!

雅治の彼女なの私は!」

「だから俺は弥生を愛しとるぜよ?」

「それが嘘だって言ってるのよ!

私を愛してくれてるなら!何で!
私を見てはくれないのよ!」

「………そ、れは…。」

「どんなに口で愛してるって言われたって!
どんなに身体で雅治を感じたって!
どんなにっ…詐欺で自分を隠したって!

私、分かっちゃうんだよ…?」


「…弥生………。」

「………もう、いいよ…。
雅治に昔、何があったかは知らない。

けど…私は…使い捨ての人形じゃない。
雅治の寂しさを紛らわせるために…彼女になったんじゃないんだよ…。」


雅治が、いつまで経っても私を見ないなら。

…私が寂しい、だけなのよ…。


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