間接キスの続き



「はぁっ…はぁっ…。」


もう、なんでうちってば、こんな日に限って寝坊するん?!

ありえへん…今日は…あの白石部長とのデートやのに!



…誘われたんは、一週間前。


「なぁ、弥生ちゃん?」

「はいっ!
な…ななななな何ですか白石部長!」

「いつまで俺に対して敬語使うん?
しかも毎回どもるし…。」

「や、そんなっ!白石部長にタメなんて使えません!」


こんな風に言われたんがきっかけやった。
うちはずっと白石部長に片思いしとったから、緊張してもうて、上手く話せへんのが実状で。
そしたら…。


「来週の日曜、空いとる?」

「え…あ、はい…空いてますけど…?」

「ほな、デートしよか。
駅前朝10時、集合やで?」


なんて誘われてしもて…。

謙也や小春ちゃんに色々聞いて、白石部長の好みに合わせた…のに!

寝坊とかほんまありえへん…!





駅前に着いたのは、結局11時やった。
一応連絡はしたけど…もう待ってへんやんな…。

自己嫌悪に陥りながら帰ろうと踵を返したとき…。


「こーら、弥生ちゃん?何帰ろうとしとるん?」

「!!!」


び…びっくりした…。
急に掴まれた手首に驚いて、振り返って見れば、そこには爽やかスマイルの白石部長がいて。

…あぁ、私服姿も麗しい…じゃなくて!


「す…すすすすいませんっ!
やっぱり私じゃ白石部長に釣り合わないし…っ?!」


うちが白石部長に慌てて言い訳をしようとしてたら…白石部長の指が私の唇を抑えて。

白石部長の指がっ……!


「あかんで、そんなこと自分で言うたら。
弥生ちゃん、よう似合っとるし、可愛いで?その格好。」

「っ!………あ、ありがとうございます…。」

「ははっ、ほな行こか。
弥生ちゃん、どっか行きたいとこある?」


さり気なく褒めて貰えたし、リードも完璧。さ…流石白石部長…。


「ちょっと喉が乾いて…ます…。」

「…そうか。
ほな、どっか入ろか。」


そう言って、うちのペースに合わせて歩いてくれる上に、私を車道側から何気ない仕草で反対側へと誘導する。
…なんちゅーか…無駄があらへん…。



しばらくして、ある喫茶店に入ったうちらは、各々飲み物を注文する。


「…紅茶頼むって、大人やね白石部長…。」

「…!
そんなことあらへんで?…弥生ちゃんは何頼んだん?」

「え、あぁ…フロート…。」

「へぇ、俺フロートって食べたこと無いねん。
一口…貰うな?」


そう言って、私が反応する前に、白石部長はスプーンでアイスを掬って食べる。

…これって…。


「白石君っ!か…かかか…!」

「ん?」

「間接っ…何しとるんっ…!//」

「…ぷっ、はははっ!
弥生ちゃん、やっと敬語、取れたなぁ?」


白石君はテーブルに肘をつきながら、うちを見てそう言うた。

ま…まさか…。


「…そのためだけに…今日、呼び出したん…?」

「ん?そうやで?」


サラリと爽やかスマイルで頷いた白石君に、妙に納得した。

…そうやんな、そうじゃなきなゃ、わざわざうちを呼び出したりしいひんよな…。


「…………そっか…。」


落ち込むうちは、白石君の顔なんて見られへん。
自然と目尻に涙が浮かぶ。


「…うち、一人で浮かれて…バカみたい…。」

「…弥生」


白石君に名前を呼ばれて、ふと顔を上げる。

…そして、重なる唇。


「………!」


驚きのあまり、一瞬事態が飲み込めず、分かった頃にはもう、白石君は元の位置に座っていた。


「し…………白石君…え?……//」

「冗談や、弥生。堪忍な。」

「へっ?」

「弥生の敬語を取るためだけに、デートに誘たわけあらへんやろ?

…俺、弥生のこと好きやってんで?せやから、デートに誘ったんや。」


なんて、柔らかく微笑んで言うもんだから。
…顔、真っ赤やろうな、うち…。







その後、白石君と色々回って、家まで送ってもうて。

部屋に入ってすぐに届いた、白石君からのメールには、


『間接キスの続き、ご馳走さま。

これからもよろしく頼むな、弥生。』


なんて書いてあって…いつの間にか、呼び捨てされてたんだ、なんて…ドキドキが止まらなかった。




―――――――――――

相互記念作品、三月艾からtrifle様へ贈ります!

甘々…か?(笑)

白石をただかっこよくしたかっただけなのに、なんかイマイチな気もする…。

気に入らなければ書き直し致しますので!
これからもよろしくお願い致します。

相互、ありがとうございました!



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