キャラなんてあってないようなもの〜節分前編〜
くろこんばんは
僕はここだよ黒子です。
キセキの世代幻の六人目と言われていますが、あまり知られていません…
ま、そんなこと今に始まったわけじゃありませんがね
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「テツ!見ろよこれ!羽化しかけてる蝉の写真!!すごくねえか?!!」
「そうですね蝉ね君。ですが今は片付けに集中してくだ、さい!」ゴン
「いってえ!!」
「蝉は一生懸命頑張ってるんです。蝉ね君も見習ってください」
今日は帝光中学男子バスケ部の大掃除の日、キセキの六人は各自のロッカーを片付けていた。
夏に撮ったであろう写真を黒子に意気揚々と見せる青峰は、まさしく小学生のようで。
何かにイラっとしたのか青峰をグーパンし、当の青峰は悶えている。
一向に進まない青峰の様子を見かねた緑間がかチャリと眼鏡をあげ、スタスタと青峰に近寄ってきた。
「あん?んだよ緑間」
「…」
無言で青峰のロッカーを探り、そして
「ふんぬっ!」
「ぬぉあああああああ!!!!やめろぉおおおおお!!!!」
ロッカーの中にあった蝉の抜け殻が入った缶ケースをゴミ箱に向かって打っていた。
「俺の蝉は落ちん」
「蝉は落ちんじゃねーよ!!何してくれんだ緑m「ヒレ伏せ黙れ!冒涜的な者共よ!!」ごめんなさい!…ってええ?!」
ドアを勢い良く開けて赤司と紫原と黄瀬が入ってきた。
「名状し難き者共よ、そのままお帰りください。特にそこの…親戚多い人」
「いやっすよぉおおお!!!なんで俺ピンポイント?!」
「という冗談は置いといて」
「無視っすか?!」
泣きそうになってる黄瀬を横目に赤司の元へと黒子、青峰、緑間が向かう。赤司はニヨニヨ顏を浮かべ、黒子以外のキセキに一枚の紙を渡した。
「「「「…まじっすか」」」」
「え、ちょ…なんで僕だけないんですk「さあ、始めるぞ…配置につけ!」はい?」
「まかせるっスよ!!」
「ちょろいのだよ」
「やってやるぜ!」
「あとでお菓子買ってね〜」
黒子を残し四人は部屋を出て行った。
残った黒子は未だ状況が読めず立ちすくんでいる。不安な顔で赤司の方を向いた。
「赤司君…何故僕には何も渡されないんですか?」
「じきにわかるさ ときに黒子」
「なんでしょう?」
赤司の方へ顏を向ける、とその時
ベチャッ
黒子の顔面に大量の生クリームが落ちてきた。
よく見ると赤司の手には紐が握られておりその紐は天井の、黒子の真上に繋がっていた。
そこにはひっくり返ったバケツがカラカラと揺れているではないか。
これらを見て何が起きたか察した黒子はわなわなと震え、赤司を睨んでいた。
「…これはどういうことですか?」
怒りに満ちた目で睨まれても平然としており、それよかケラケラと笑っている。
「ここはもう戦場だ、幻影の奏者(ファントム)よ!」
「!!」
突然大きく手を広げ、瞳孔を開き、黒子に語りかけた。
この意味のわからないノリ。そう、“あれ”が始まったのだ。
こうなった赤司を止めるには方法は一つ…
「そうでした…もうここに降り立ったが最後、自分以外は敵も同然…!」
くっと苦虫を噛むような顏をして俯いた。
黒子の反応にぱァっと赤司の周りに花が咲く。いつにもましてキラキラと輝いている彼はこうなるともう止まらない。
このことはキセキの世代では“ATM(赤司中二モード)”と呼ばれている。
それはさておき
いくら中二…もとい赤司のノリとはいえこれはひどい。ぐっとこぶしに力を入れると顔を手で覆った。
「僕は…僕は…」
「どうした?ファントm」ベチャ
様子を伺いに顔を覗いた赤司の顔に自分の顔についていた生クリームをこれでもかっというほどなすりつけた。ほうけている赤司を見てニヤァと笑うと両手に生クリームを持ち、ベンチに足を掛けて今までにないくらいの極悪人面を見せつけた。
「あははははは!!!!そうだ…みんな敵…Stay Alert! Trust No One! Keep Your Laser Handy! …先に君からZAPしましょうかねえ…煌玉王(ブレイザル)?」
「ふっ…我に逆らうとは頭が高い!そんなことはこれを受けて耐えてからにするんだな!くらえ、『プラズマカノン!!』」
「くっ…流石サラマンダー、いきなり80%エフェクトを使ってくるとは…ですがこれならどうですか?『鏡の盾!!』」
「くっ!まだまだぁ!!」
黒子に向かって生クリームを塊で投げつけ、それを腕で庇うやすぐに同じように腕をひねりながら赤司に向かって投げ返す。
ベチャッ、バチッ、グチャッと生クリームが飛び交い部屋はいつしか生クリームまみれとなっていた。
荒ぶる鷹のポーズをとる黒子、ジョジョ立ちする赤司。はぁあああああ!!!と叫びながら赤司は部屋を飛び出し、その後を追うように黒子も部屋を飛び出した。
向かった先は、体育館
そこへ向かうまで、黒子が飛び蹴りを食らわせながら生クリームを投げつけては、それをひらりとかわしつつ回転後ろ回し蹴りをしながら生クリームを投げつける…といったバトルを繰り広げていた。
そのせいで周りにも被害が及んだのは言うまでもない。
「ここまでです!」
なんだかんだあり、体育館の入り口に追いやられた赤司はすでに生クリームは尽きていた。
二人して肩で息をしながら、そして黒子は勝ち誇ったように相手を見ている。決着は、着いた。
ように見えた。
「さあ、おとなしく白い悪魔(生クリーム)の餌食になってください」
「魔王が悪魔相手にやられるとでも?やられるのは…お前だ!」
そう言うと体育館の扉を背にしたまま大きく開け放った。
そこに待ち受けていたのは…
パン!パン!
「…へ?」
乾いた音共に放たれる紙テープ、そして色とりどりに装飾されたテーブルに並ぶ料理の数々。
体育館の中には黄瀬、緑間、青峰、紫原、桃井、さらに虹村がクラッカーを持っていたのだ。
「「「「「「黒子/っち/テツ/テツ君、Happy birthday!!」」」」」」
突然の祝福の言葉に呆然とする黒子。
(え…ハッピーバースデーって…あっ、そうか…今日、僕の誕生日…まさか覚えていてくれたんですか…?)
構えていた手を下ろし、手についた生クリームを落とすと赤司が前に立っていた。
「ファントム…いや、黒子よ。白い悪魔か魔界の宴会か、どちらの餌食になりたい?」
「!」
7人は優しさに満ちた目で黒子を見つめる。
ふ、と自然に笑みがこぼれたのを見逃すはずがなかった。
(あぁもう、これだから魔王様は)
くしゃりと顔をはにかませると
「その宴会、逆に食ってやりますよ!」
そういい、みんなの元へ飛び込んだ。
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「…その後8人でPET(パイ投げエディションタイム)してました」
「「イイハナシダッタノニナー」」
そんなことないですよと言うとズズッとシェイクを飲みほした。
すでにテーブルには5本もの空きのコップが置いてある。
「おま…飲み過ぎだろ」
「いやぁ昔話をしていると懐かしくなりまして」
「お前のシェイク好きーは前からだろ!」
火神と降旗に呆れツッコミをもらいながらも本日六杯目を空にした。
「ったく…どんだけ飲んだら気が済むんだよ オラっそれ以上飲んだら飯はいんねえだろ、もう飲むなよ」
「ほら、行くよ黒子」
「?え、どういう…?」
突然の二人の言葉に理解ができず、その場に立ち止まる。
そんな黒子の手を取るとため息をつき、呆れた顔を見せた。
「なに言ってんだよ 今から火神ん家でお前のバースデーパーティーするんだよ」
「もう先輩達きてるぞ ほら、早くしろ」
デジャヴ、とはこのことか。
早く、と手を差し伸べる二人の姿はあのときのチームメイトと重なっていた。
(僕はなんて幸せ者なんでしょうね)
くしゃりと顔を綻ばせると
「バニラシェイクないと、パイ投げですからね!」
二人に満面の笑みを見せた。
いつもなら見ることのできないその顔に驚き、そしてにっと笑い返す。ねーよ!と、二人にはたかれながら三人は店を後にした。