毒入りスープ〜北の部屋〜


「この部屋はなんの部屋なんでしょう…」



〜北の部屋〜



その部屋は真っ白なドアノブなどがない、板のような押し扉となっていた。ギィと押し入ってみると、中はとても綺麗で食器棚や調理台、ガスコンロや洗い場など様々なものがある。そして部屋は幾つもの豆電球が設置されていて、真昼のようにずっと明るい。

「さっきの書庫とはうってかわって綺麗な部屋ですね。調理部屋…とでも言いましょうか、おや?あの鍋は一体…?」

ガスコンロの上には蓋をしてある大きな鍋が置いてあった。

「…あまりいい気はしませんが開けてみますか」

黒子は恐る恐る鍋の蓋を持ち上げた。
その中は










バラバラの死体で一杯になっていた。

「〜っ!!!」

あまりにも衝撃的すぎるものを直視してしまった黒子は思わず口をおさえ目を背ける。
こみ上げてくる恐怖心を必死に抑えながら蓋を閉めた。

「…な、なぜこんなところに死体が…」

速まる鼓動を落ち着かせるため鍋から離れ、深呼吸する。と、ドアの向こうに置いてある血のスープの皿が目に入った。

「…なるほど あれはあのスープの予備というわけですか」

顔を青くしながら周りを見渡すと調理台の隅に紙切れがあるのに気付いた。

『大事な 調味料は 現在 在庫切れ』

「…?調味料とはなんのことでしょう… スープはすでにありますし…まだ何か見落としてるのでしょうか…」

困りましたね…と部屋を歩いていると食器棚が目に入った。
その食器はすべて銀色に輝いている。
その中のスプーンを一本手にとった。

「いわゆる銀食器というやつですか、きれいですね …おや?なぜこのスプーンだけ持ち手が黒ずんで…まさか!」

何かに気づいた黒子は手に持っているスプーンと新しいスプーンを持ち部屋を出た。




向かった先はさっきいた書庫の部屋。
何か思いついたのか手に取った黒い本に新しいスプーンをそっとあてる。と、当てたところが黒ずんだ。

「…やはりそうでしたか すべて銀色だからまさかと思いましたが…本当に銀は毒物に触れると黒ずむんですね」

毒に使われていた硫化砒素は銀にふれると黒ずむ。
すなわち本には毒がべったりとついていた。
予想があたり複雑な心境になる。
本が毒まみれなのはと、本についていた毒をスプーンで丁寧に全て取り去ると、本をもとあった位置に直し書庫を後にした。
「さて…この毒どうしましょう…」

毒まみれのスプーンを机におくと腕組みをしてうーんと悩む。
念のため、と血が入った皿の中に毒のついていないとこをつけてみると何も変わらずドロッとした赤い液体がスプーンにまとわりついた。

「うっ…この中には毒は含まれていないんですね…」

血がついたスプーンを皿に立てかけるとドサッと地べたに座り込んだ。
立て続けにわかる衝撃的な事実にさすがの黒子も参ったようで、顔は普段とは違い青ざめていた。

「確か毒入りのスープを飲まないといけないんでしたね…わざわざ調味料が切れているとしているのは自分で毒を盛れと言うことですか…」

冗談きついです…と体操座りのままうなだれる。
だが周りには誰もいない。
いるのは黒子ただ一人。

(こんなとき火神君ならなんというでしょうか…)

相棒のことを思い浮かべ目を閉じる。
そして



「…まだ飲まないといけないとは決まったわけではありませんね.ほかの部屋もありますし.それに…」

(火神君ならこんなことで諦めません)


足にぐっと力を入れ立ち上がると、目の前に見えた扉に向かって歩き出した。





ろうそくは少し短くなっている



To be continued…



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