抜けてもいいですか? (1/3)






───パッ


「オレのシュート範囲はコート全てだ」





第1Q、互いに力を見せ合ったかと思えば、その終わりに緑間君の3Pが決まった。

見たことのない、知らない新しい彼の力。



「黒子君…あれ…昔から?」

「いえ…僕の知ってる彼の距離はハーフラインまでです」



インターバルの間、タオルを渡しているとそんなカントクと黒子君の会話が聞こえた。
緑間君のシュート範囲の広さに皆驚きを隠せない。
そうでなくとも高尾君のホーク・アイによって黒子君のミスディレクションが効いてないのに。


「とにかく緑間君を止めるわよ!」


インターバルを終えてコートに向かう、メンバーの様子に、私は何も言えなかった。





「緑間が止まらねえ!!差が開く一方だ!」



第2Qが開始して間もなく緑間君が連続でシュートを決めていく。
ボールが集まる先は彼だと分かっているのに、止められないなんて。



「(黒子君……)」



試合前、必ず勝つと言ってくれた彼が握ってくれた手を、そっと見つめる。
ワアアアという歓声が聞こえていたけれど、それをぎゅうっと握り締めた私は観客席の──秀徳の応援席に視線を移した。

ばち、と目があったのは先ほど再会したばかりの先輩たち。
見下すように、嘲笑うようにこちらを見てきたけれど。
私は、もう怯むことはなかった。





「第2Q終了です。これより10分のインターバルに入ります」





そんなアナウンスが入ったあと、私は隣で苦虫を噛み潰したような表情をするカントクに、声をかけた。



「すみません。少し、抜けてもいいですか?」











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