ヒドイですよね (2/3)
ういーん、と開く自動ドアに吸い込まれるみたいに入店し、真っ直ぐにお目当てのコーナーへと歩む。
“バスケットボール用品”と書かれたコーナーの一番端、ボールが並べられた棚の前で立ち止まった。
「いち、にー、さん、…よいしょっ」
ボールを三つ抱えた私に驚く火神君の前を通りすぎてレジへ一直線。
ハッと気付いた彼が二つ持ってくれたので「ありがとう」と笑顔を浮かべた。
「いらっしゃいませ!…あ、名前ちゃんいつも有難う」
「いえいえー。そうだ、あと頼んでたのお願いします」
「はいよ、ちょっと待っててね!」
この店には短期間で何度も訪れているため、レジの店員ともすっかり顔見知りだ。
レジ台に置いたボールの横に手首から外したリストバンドを置くと、店の奥に消えた店員を見ていた火神君が不思議そうに此方を見た。
「何を頼んだんだ?」
「大したことじゃないんだけど──これの新しいやつをね」
「お…おお!?」
リストバンドを差せばそれを掴んだ火神君が目を丸くする。
くすりと笑いが溢れた。
「手首の強化にウェイト付けてたんだ。で、もう慣れちゃったから少し増やそうと思ってさ」
「そういやコレずっと付けてたな…ただのリストバンドじゃなかったのかよ」
「ふふ、そうなの。ここで作ってもらってるんだ」
彼とそんなふうに話していると、やがて店員が新しいリストバンドを片手に戻ってくる。
隣からびしびしと視線を感じながらもその新しいものを手首に通して、ボール三つと合わせた会計をサッと済ませて。
パンパンになったショップ袋を抱えて店を後にすると、すっと横から手が伸びてきた。
「火神君?」
「おら、いいから行くぞ」
「わ、待ってよー!」
荷物を持ってくれるのはこれで何度目だろうか。
不器用ながらも優しい姿に自然と頬が緩んだ。
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