絶対に、勝ちますから (2/2)












「────黒子君?」



心配そうに窺ってくる声色にハッと意識を戻す。
目の前に居た名前さんは「大丈夫?」と続けた。



「すみません。少しボーッとしていました」

「…正邦との試合、すごかったもんね」



一時間ほど前に準決勝である正邦との試合を終え、決勝進出を決めた誠凛はそれぞれ休憩をしている最中だ。
火神君はぐーすかと寝息を立てているし、日向先輩たち二年生もうつらうつらとしている。

そんな中、寝てはいないのにどこか上の空だった自分に名前さんが声を掛けたということらしい。



「えーと……津川君、だっけ?彼のDFはつい見とれちゃったなあ」



彼のプレイを思い返しているのか、ぽわんとした表情。
その様子に良い気はしないのも当然で、ムッとしながら「でも僕は抜きました」と心中で返す。



「次は……秀徳、ですね」

「………うん」



難色を示した声を聞き逃す筈はなく。
間を空けて、僕は思い切って訊ねることにした。





「…………先輩に、会ったそうですね」

「!」

「火神君が心配していました」



一瞬「何で!?」という様に目を見開いた名前さんだったが、火神君の名前に納得したらしく苦笑いを浮かべる。
僕は、まだ続けた。



「秀徳戦……平気なんですか?」




トラウマの原因である帝光時代の先輩の存在を知って、彼女が平常心で居られる訳がない。

…だが予想に反し、名前さんはにっこりと笑うのだった。





「確かに、先輩たちのことが気にならないって言ったら嘘になるよ。…でも、そんなことより私には今の仲間──皆の方が大切なんだ。だから皆を応援したいし、傍に居たいし、力になりたいって思ってる」



その瞳に迷いや不安などは映っていない。

真っ直ぐに送られてくる視線と誠凛に対する彼女の思いに、僕は体を巡る血がドクリと脈打ち迸るのを感じた。



「要らない心配かけてごめんね。だけど平気だから安心し──」

「名前さん」

「…へ、」



名前さんの台詞に横入りし、尚且つ急に手を握り締める。

小金井先輩や伊月先輩、黄瀬君ならともかく、自分がそういった行動をするなんて珍しいことだと自分でも思う。
目を白黒させる彼女の反応は最もであろう。



「───勝ちます」

「…!」

「絶対に、勝ちますから」



意を決して告げる僕の手は熱い。
それを伝えるように強く握った手をそっと握り返し、名前さんはニッコリといつもの明るい笑顔を浮かべるのだった。




















「───よし、10分前だ!…行くぞ!!」





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