確かにそうっスね (3/3)
ダムッ
シュッ
───スパッ!
「………、」
黄瀬君が居なくなってから、その後。
私は当初の予定通りにストバスで練習をしていた。
ドリブルに、シュートに、そしてゴール。
相手や味方を想像しては試行錯誤し変化するプレイ。
最終的にシュートを決め、てんてんと転がるボールをそっと拾い上げる。
「(何だか……)」
何かが、違う。
…違うというよりも、変わらない。
代わり映えのしない、そんな自分のプレイには溜め息すら出なかった。
「…、いいなあ……」
誠凛で輝き出す火神君に光を見付けた黒子君、そして誠凛との戦いのあとに楽しさを見出だしたという黄瀬君。
彼らを思い出して、更には自分と比べて。
溢れた言葉は間違いなく本音。
「(私は…ただ、)」
バスケが大好きなだけだった。
だからこそ中学でバスケ部に入った。
好きが故に練習に励み、次第に比例した実力を身に付け、そうしたらいつの間にか人とは違う位置にいて。
『苗字ってさァ、最近チョーシこいてない?』
『てか一年でスタメンとか生意気!』
非難や陰口はたいして気にならなかった。
バスケをやっている時には、そんなことは関係なかったから。
ピーッ!
『試合終了!98対96で帝光中学校の勝利!』
それなのに。
『っ先輩たち!どういうことですか!?』
『…何が?』
『…っ私にパス、殆どありませんでしたよね…!?』
詰め寄った私に、先輩らは冷ややかに笑う。
『はっ!何様のつもりだか知らないけど、生憎とあんたにやるパスなんか無いわよ』
『な…!?』
『そうそう。だからバスケしたいなら、他のとこでやったらいいんじゃない?』
『あははは!それ最高ー』
バタンと閉まる更衣室のドア。
私は呆然と立ち尽くす。
『此処は……こんな、チーム…だったっけ……?』
バスケは大好きだ。
でも、一人でやるバスケは好きではなかった。
だからバスケ部に入っていた。
だけど、一緒にやるのがこんなチームだなんて。
『………もう、無理だよ─────』
そして、その翌日。
私はバスケ部を退部する。
春の暖かさがまだ残り、青々とした緑が生まれ出す、そんな5月のこと。
───それから月日が経って。
今もまだ、自分のプレイはあの頃のまま……何も成長などしていなかった。
next
←/
→
←back