久しぶりっ! (2/3)
「ただいま戻りました」
名前を無事に観客席まで案内し、ベンチに戻ってきた俺はそうして主将の前に立った。
「すみません、後半は俺を出してもらえませんか」
「…!」
「はあああ!?」
言うや否や、後ろで叫ぶ先輩たち。
軽トラなんていう物騒な単語さえ聞こえた。
我が儘なのは分かっている、…だが。
どうしても出たいという思いがある。
「…今日の試合、監督にはお前を温存するように言われてる」
「はい。それを承知でお願いします」
キッと強めに言えば、彼は折れて「仕方ないな」と苦笑いした。
許しを貰った俺が軽くアップしていると、一連を見ていたらしい高尾がにやにやして近付いてきた。
「真ちゃーん。これは一体どういう風の吹き回しー?」
「……単にシュートタッチを確かめたいだけなのだよ」
平然と答える。
「へえ?あの女の子が見てるからじゃなくて?」
「っ!?」
そう言った高尾はちらっと観客席にいる名前を見て、それにぴくりと肩を跳ねさせた俺に「やっぱり」と笑う。
──そして。
「それにさ、…今日の占いは良くないんだろ?無理して恥かくなよー」
しかしながら高尾の予想に反して、俺は全く逆の反応を見せた。
「…恥?そんなもの、かくわけが無いのだよ」
挑発してくるをフッと笑いで一蹴して。
テーピングをしゅるりとほどく。
「──名前が、俺に微笑んだのだからな」
「ほー?言うもんだねえ」
「事実なのだよ」
アイツが見ている前で失態を犯したことはない。
そう残して、コートへと歩んでいった。
←/
→
←back