彼には弱点がある (2/3)
「……っ、」
「名前ちゃん、そんな固くならないで」
「カントク……」
「きっと突破口があるわ。それまで信じましょう」
さすが強豪、こういう状況を一筋縄ではいかないというのだろう。
黄瀬君を警戒して中を固めた誠凛に対して海常の4番がナメるなとばかりに3Pを放ち、効力の薄れた黒子君は慣れられてしまい。
じわりじわりと互いの差が開いていく。
「もう諦めたらどうっスか?」
「なんだと……!?」
何やら、黄瀬君と火神君が言葉を交わしている。
「どう足掻いてもオレには勝てねぇスよ。名前っちの前で負けるわけにはいかないし。ま…現実は甘くないってことスよ」
冷たく吐き捨てた黄瀬君が、一瞬だけちらっとこちらを見る。
すると、突然。
コート内に火神君の大きな笑い声が響いた。
「ワリーワリー、ちょっと嬉しくてさァ…。そーゆーこと言ってくれる奴久しぶりだったから」
「……!?」
そんなことはアメリカでは普通だったと言った火神君は、ニイッと愉しそうに口端を上げた。
「強ぇ奴がいねーと生きがいになんねーだろが。勝てねェぐらいがちょうどいい」
それから、彼は黄瀬君の弱点が分かったと続けた。
「いくら身体能力が優れてるオマエでも、カゲを極限までウスめるバスケスタイルだけはできない。…つまり、」
近くにいた黒子君の襟をむんずと掴み、クシャッとその頭に手を置く火神君は得意気に笑う。
「コイツだろ!オマエの弱点!」
何すんですか、と不満を露にする黒子君。
そんな二人の姿に、試合中とは分かっていながら笑みを漏らしてしまったのは秘密だ。
「あ、名前さんが笑顔です」
「なあ!?(か、かわ…!)」
「名前っちー!オレ頑張るっスよー!」
「っちげーだろ!!」
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