彼には弱点がある (1/3)








キセキの世代の一人、黄瀬涼太君。

中学二年からバスケットボールを始めるも、恵まれた体格と才能で急成長を続けるオールラウンダー。
彼は一度見たプレイを完璧に模倣する能力を持ち、尚且つそれ以上の力で返す。

中学の頃に、その実力は知っていたけれど。





「(こんな…っこんなに進化してるなんて、)」



ほんの数ヵ月の間にここまで成長してるなんて思わなかった。




ピーッ

「誠凛TOです!」



火神君のダンクによって古びたゴールが壊れ、全面コートで再開した試合。

海常の監督を文字通りギャフンと言わせたまでは良かったが、黄瀬君が投入されてからのランガン勝負はあまりにも白熱し過ぎてる。
その流れを変えるため、TOを取ったカントクの判断は正しかった。



「はい!ドリンク、それとタオルです!」



ゼーハーと肩で息をして大量の汗を流す選手たちには返事を返す余裕もないらしい。
それぞれが無言で受けとる中、カントクが「ムリもないわ」と小さく呟く。

第1Qとは思えないほど、皆の体力の消耗が激しい。
それだけハイペースだったのだろう。



「とにかくまずは黄瀬君ね」

「火神でも抑えられないなんて…」

「もう一人つけるか?」

「なっ…ちょっと待ってくれ…ださい!!」



揺れるベンチ。



「…いや、活路はあります。彼には弱点がある」



はっきりと口にした黒子君の言葉に、そう言えばと一つ気付いたことがあった。



「ね、ねえ!黒子君、もしかして今…!」

「…はい。名前さんの察した通り、予想外のハイペースでもう効力を失い始めてるんです」



え?と黒子君の言葉に首をかしげる一同。



「ど、どういうことなんだ?」

「…、黒子君のミスディレクションは40分間ずっと発動できないんですよ。使いすぎると慣れられてしまうので…」

「………」



彼の言葉に付け足して言えば驚きのあまり口を開いて固まる面々。



「そーゆー大事なことは最初に言わんかーー!!」

「カントク!黒子君が落ちちゃいますって!」



そしてカントクが黒子君の首をメキメキと絞めている内に、TO終了のホイッスルが鳴ってしまう。





「このままマーク続けさせてくれ…ださい。もうちょいでなんか掴めそうなんス」

「あっちょ待っ…火神君!もう!」



その後、コートへ向かっていく選手たちに素早く指示を与えて送り出したカントクは、とほ〜と人知れず涙を流していた。



「あーもー、いきなりズッコけたわ〜〜〜」










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