優しいねー火神君て (3/3)
「おら、さっさと話しやがれ」
黒子君のバニラシェイクを買ってきて、すぐ座った火神君は開口一番にそう言った。
勿論その目的語は当初の予定通り、私のプレイについて…だ。
ある程度は部活で話していたし、ここではその続きからでいいだろうかとストローから口を離す。
「──コート内を掌握する為に相手のプレイを制するってのは話したよね、」
「おう。つかコートを掌握するっつー意味が分かんねえよ」
「うーん、何て言うか……」
分かりやすい言葉が出てきたらいいのに。
言い淀む私を助けるように、コトンとシェイクを置いた黒子君が顔を上げた。
「名前さんは相手の行動を自在に操れるんです」
「じざ、…はああ?」
ああっ、また語弊が…!
私はすかさず口を挟む。
「えーと…ほら、プレッシャーかかって自分のプレイをしにくくなると、ある程度の行動しかできなくなるでしょ?」
「?あー、多分な」
「私が予想した行動をさせる為に、相手のプレイを制限するんだよ。どんなに強い相手だって予想通りの行動をするなら、こっちが簡単にゲームメイク出来るから」
「……」
彼は複雑な表情で考え込んだ後、ぽつりと一言溢す。
「……ある意味相手を操ってんじゃねーか」
「だから言ったじゃないですか」
「いやいや、操るまではいかないよ!そうせざるを得なくさせてるだけだもん」
「「………」」
二人が何とも言えない顔で私をを見、それから疲れたように深い溜め息を吐く。
ちょっと、どういう意味なのかなそれは!
「……ま、これで違和感の理由が解ったぜ。今日の1on1は俺のプレイで勝ったんじゃなくて、名前にそうするようにされてたってことか」
「な、なんか…そう言われると私が嫌な奴みたい……」
嫌だなーとぼやく。
「今更だろ」
「今更ですよ」
「えええっ!!?」
真顔で言い切られてしまって、ガーンとショックを受けていると。
ぷっと吹き出す二人に頭を撫でられた。
「バーカ。冗談だっつの!」
「そんなふうに思ったことは一度もありませんよ」
「……っも、もう!本気で焦ったじゃんか…!」
そんな、マジバで過ごすひとときは。
確実に彼らとの絆を深めてくれるみたいで自然と顔が綻ぶのだった。
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