優しいねー火神君て (2/3)

















「───で。だからって何で俺が奢らなきゃなんねーんだよ!!」



──部活後のマジバーガーにて。

ガッタン!と荒々しく椅子に腰掛けた彼は、それでもちゃんと私が頼んだ分のジュースをトレイに載せてくれていた。



「ったくよー…」

「あれ、僕のバニラシェイクは無いんですか?」

「ぬあああ!?」



先程から目の前に座っていたのに気が付かなかったのだろうか。
黒子君の言葉にまたもやガタガタッと音を立てる火神君は冷や汗を流している。



「びびびっくりさせんなよ!っ何でお前がいるんだ?!」

「通りすがりに名前さんが見えたので。…僕が居たらいけないんですか?」


私が火神君と此処に来たのは、彼がプレイについての話を詳しく教えろと言ってきたからだ。
交換条件にジュースを出したら本当に買ってきてくれた彼にしてみれば、いつの間にか居た黒子君のバニラシェイクなんて何のこっちゃという話なんだろう。



「名前さんのプレイについてなら、僕みたいにずっと見てきた人の説明も必要じゃないですか?」

「なっ…!?」



彼を待っている間、黒子君に此処へ来た粗方の理由を話してしまっている私は、慌ててこちらを見る彼に「話しちゃった」と手を合わせた。



「だから、バニラシェイクで手を打つと言っているんです」

「何でテメーは上から目線なんだよ!」



バシッと叩かれる黒子君は至って静かに「痛いです」と言う。
もう見慣れた二人のやり取りにジュースをずずっと飲んでいると、気付いた火神君に「他人事じゃねーだろ」と溜め息を吐かれた。





「バニラシェイク…」

「まだ言うのか!」

「まあまあ。…あ、じゃあ黒子君、私のジュース飲む?」



ちょっと飲んじゃったけど、と差し出そうとした手がガシリと押さえられる。



「っわかったよ!バニラシェイクだろ?特別に奢ってやる!!」

「火神君、無理しなくても私のが…」

「うるせー!いいから二人とも待ってろ!」



お願いしますと笑う黒子君だが、どこか楽しそうにも見えた。




「(そんなに名前さんのを渡したくなかったんですね、火神君)」

「何だかんだ言って優しいねー火神君て」

「(…ただ、本人は全く気付いてないようですが)」










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