実力ゥ? (3/4)
「───はい、そこまで!」
ボールを追っている最中、カントクの声にぴたりと足を動かすのを止める。
およそ5分ほどのゲームとはいえど額を伝う汗。
まさかこんな風にプレイをするなんて考えもしなかったので、勿論その為のタオルなど持っていない。
着ていたジャージで拭おうかと迷っていると、スッと差し出される、タオル。
「お疲れ様です」
「わ、ありがとう黒子君」
いいえと返す彼からタオルを受け取り、ちらりとスコアボードに視線を移す。
そこには案の定というか予想通りというか、18対2という圧倒的な差の得点数が示されていた。
やっぱりこうだろう、な。
「おい!」
「へ?」
振り向けば何やら文句を言いたげな表情の火神君が立っていた。
「ちょっ火神君?どうしたの?」
彼のただならぬ様子に異変を感じたのか、カントクが慌てて間に入る。
が、彼はカントクも気にも止めずにぐっと詰め寄ってきた。
「何だよ今の!お前強いんじゃなかったのかよ!?」
「ええ?!だからそれはっ」
さっきから否定してたのに甚だしい勘違いだよ火神君!
「落ち着いてください」
「っぶ!!黒子…ってめ!」
「近すぎです」
渡すのかと思いきや、もう一つ手にしていたタオルを火神君の顔に押し付けた黒子君はいたって涼しい表情で彼を引き離し。
しかも珍しくもその言葉に力が入ってたようにも感じられて、火神君はうぐっと反論しようとした口を閉じる。
「それに、名前さんが実力者なのは本当です。…現に、君の体力の消耗が激しいじゃないですか」
「……確かに。数分間1on1をやっただけにしては疲れてるんじゃない?」
汗の量が遥かに多いわ。
そんなふうに言い切ったカントクは、それからゆっくりと私を見た。
「火神君の強さが際立つ試合に見えたけど…そうじゃなかったみたいね」
「流石です、カントク」
にやりと笑って言うカントクに、こくんと頷く黒子君はどこか楽しそうな声色だ。
火神君は何かを考えているのか黙ったまま、ぐいっと先ほどのタオルで流れる汗を拭っていた。
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