無題
2014/04/28 15:55


ある一匹の飼い猫がいた。
貧困ながらも優しい家族だった。
家族が住んでいた家を出る時、猫は貧しい家族を思い、隠れて家に残った。
犬は人に付き猫は家に付くとはよく言ったものだが、猫は空き家に一匹で住んでいた。


人の臭いのついた猫は、野良猫として生きていくには少々難しいと知っていた。
だから猫は、野良猫達に混じることなく、一匹で静かな空家に住み着き生きていた。
微かに、そう微かに呼吸をしながら。


気の弱い猫は餌にも有りつけず、のち、空腹のまま外を彷徨うようになった。
鴉につつかれ犬に吠えられ近所の猫に威嚇され、ふらふら、ふらふら。




ついには路上に倒れた猫は、その日一匹の犬に出会った。
毛並みの良い、飼い犬だった。
犬は猫の様子を見かねて、己が主人に強請って手に入れた鮭を猫の目の前に置いた。
猫はうっすらと目を開き、一瞬戸惑ったもののやがて糸が切れたように夢中で食べ始めた。


それから、犬は毎日のように何か猫の餌になるようなものを空き家まで運んできた。
猫は次第に、犬に懐くようになっていった。















数日経ったある日、猫は通りすがりの人間から偶然餌を貰った。
食べようかとも思ったが、とっておいた。
夜になって、猫はもらい物の餌を引っ張り出すと、待っていた。
今までのお礼に渡そうと、犬が来るのを待っていた。




犬は来なかった。




その日から、犬は来なくなった。




2日経って3日経って、1週間経っても来なかった。
猫は5日も経つと、少し心配になり始めた。
15日ぐらい経って、猫は犬を捜して外をうろついた。
犬と出会ったところまで歩いていくと、その道端に餌が落ちていた。







その少し向こう側に、首だけの犬がいた。







身体から首まで地面にすっぽりと埋まった犬は、飢餓状態に陥っていたらしい。
どうにも近付き難い雰囲気で此方を睨んでいた。


そして猫は見た。


瞬間、その首が宙を舞うのを。


とんだ首が、背後に居た人間に取り押さえられるのを。



首のなくなった犬は、土に埋まったまま動かない。
猫は暫くその周りをうろついて、一言「にゃあ」と鳴いた。




猫はその後、首なし犬の前に持ってきた餌を置いて隣で寝た。
死ぬまで、猫は眠ったままだった。









***








猫が死んで数日経ったある日、彼女は「そこ」を訪れた。
着物に羽織を羽織った姿で、巾着を手にとことこと歩いていく。
彼女は奇妙なものを連れていた。


リードに繋がれたのは、首のない犬らしき何か。


周囲の人が時折噂したり、小さく悲鳴を上げたりした。
しかし彼女は気にせず歩いていく。
犬もまるで、首があるかのように普通についていく。


道なりに歩いていくと、四辻に出る。


彼女はその真ん中にしゃがみ込み、犬の身体を撫でると小さく呟いた。







「…今、起こしてあげるから、ね」






彼女は懐から小さなスコップを取り出すと、ざくざくと辻の真ん中を掘り始めた。
やがてそこから出てきたのは、犬の首。


そして彼女は、優しく微笑んではその首にキスをする。



















「犬神さん、遊びましょ」











ID.00774の存在意義
(二股の尻尾が風に吹かれてゆらゆら揺れた)






にゃんまたろりと犬神ひなた様のなれ初め
こんな話妄想してにやにやしながら仕事してました
猫又は通常年老いた猫が妖怪化したもの、だそうですが
にゃんまたろりはあの世に渡って妖怪化したとかいう架空設定のにゃんまたです
まぁその辺笑って流して頂ければ




お題お借りしました:累卵







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