無題
2015/03/23 01:36



※ウエートレス=(元)boy






煉獄ウエートレスの朝は早い。



深夜2時に起床し、食堂のお掃除から始まり、その合間に自分の朝食を済ませる。
厨房の隅々まで埃やら汚れを確認し布巾掛け。
食堂の天井の角ひとつ塵は残さない。鼻歌を歌いながら丁寧に丁寧に、まるで嫁に手本を見せる姑のように埃を払っていく。


掃除が終わって一息つくと厨房に籠る。
愛する旦那様が見回りから帰ってくるまでに、朝食を作っておく。
手はしっかり洗って、冷蔵庫からハーブを持ち出した。


「こころに〜 きずをつくり〜にげてきた〜♪ そんな〜 ひとだけが〜たどりつく〜」



小さな頃は戦う戦隊ヒーローにも憧れた。
曲がりなりにもboy、おままごとも大好きだったが男の子だった。
某美少女戦士番組(再放送)もよく見ていたりしたものだ。

そういえば、何で美少女って美の少ない女って書くんだろう。
そんなどうでもいい疑問を抱いたことをぼんやりと思いだした。




ふと、あの時見たヒーローと自分の姿を比べてみる。
正直正反対だったがウエートレスはあまり気にしなかった。

今の夢は、戦う少女じゃなくて可愛いお嫁さんだった。
だから別に、かっこよくなくてもいいじゃないか。
自分を好いてくれるかっこいい料理長に、美味しいお料理を食べさせてあげられればそれでいい。
もうboyでいる必要もないとさえ、ウエートレスは思うのだ。



「もし生まれ変わったら、優しくて上品で可愛い女の子になりたいな」




ぽつりとつぶやく。



「シェフの近くに女の子として生まれて、沢山デートして、結婚式挙げて、子供は…」





迷界にある限り叶うのかどうかすらも怪しい来世を想像してはシザーサラダの上にケチャップでハートを描いていく。
満足すると、ウエートレスは恍惚とした表情のままサラダを冷蔵庫に入れ、ハーブを摘みに出て行った。





―数時間後、帰ってきたシェフがハート塗れのシザーサラダを発見して恋人の浮気だとか変な勘違いに走るのは、また別の話。











乙女なウエートレスboyと嫉妬する妄想(暴走)シェフの朝






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