無題
2015/02/27 20:11





「いただきます」


食堂の椅子の上、皿を目の前に律儀に手を合わせるboy。


左目には真白い医療用の眼帯。その下から伸びる緑色の蔦。
いつからこうなったのかは覚えていない。
ただそれが日常化したある日から、boyは今まで口にしたこともないものを食べたいと言ってきた。


それは植物。
あるいは無機物。
もしくは毒。


最初はとても食べられたものじゃなかったそれを、今や当然のように貪り喰らう少年と、当然のように食事に出す俺。
明日は何が良いだろうか。骨か、心臓か。それとも生血のスープでも出せば満足だろうか。



「ご馳走様でした」
「ん」


満足げに一息ついたboyに、コップ一杯分、鮮やかな色の液体を用意した。
珊瑚を磨り潰した食後の薬。毎日少しずつ飲ませることで、boyの病を抑制、治療できるのだとフリッツが言っていた。


「ありがとう、シェフ」
「……早く、この蔦がなくなってしまえばいい」
「うん」



薬を飲むboyの隣で、思う。
もしこのまま病が進行していったら、その内boyは綺麗な花にでもなるのだろうか。
それはそれで悪くはないのかもしれない。
ただ、己が取り残されることを考えて淋しくなってしまう俺は、とうの昔からお前に惚れているのだろうが。


「シェフ?」
「…boy」
いっそお前が花になるその前に、お前とひとつになってしまえたら。
どんなに嬉しく、どんなに愛しいことだろう。
たとえそれが、他者から見れば狂気的で淋しい終わりだったとしても。




明日の夕飯に俺の片手でも料理して出したら、boyはどんな顔をするのだろう。









どうかその終末は美しく、
(気違いだなんて今更で)







boyは左目から体を覆う蔦が伸びてくる病気です。進行すると普段とは違う物が食べたくなります。珊瑚が薬になります。 http://shindanmaker.com/339665

くーしゃんのお宅に便乗してみたらいかにもシェフボイすぎてやるしかなくなったなどと





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