無題
2014/10/29 04:27




もしも、ひと夜の果てに君が此処から居なくなったら。
僕は世界を、今度こそ許しはしないでしょう。

もしも、君が真っ赤になって路地の裏に転がっていたら。
僕はその時、世界を愛する意味を本当に失ってしまうのでしょう。
そうしてきっと、その日が僕と世界の本当のお別れになる。


吐き気のするようなこの世の中。
一度は愛すことを止めたこの世界。
再び依存し始めたのは、君が此処にいたからだ。

君が生きたいと願うから。
君が世界を誇りに思うから。
君が自身の生を、其の教えに従って最期まで駆け抜けようと足掻くから。
だから僕は、世界の行く先をもう一度だけ見直そうとした。


だけどそんな君の生は、あんまりにも過酷で残忍で。


子を愛すのが親の責務、親を尊び愛するのが子の役目。
口癖のように、親孝行しなさいよって。
学校の先生はみんな、右に倣えの姿勢で偽善ぶったそれを並べ立てていたよ。
僕らはそれを全うしてるだけ。先生の教育方針に律儀に付き合って、正当理論に従っただけ。


君も僕も、ただ言いつけを守ってただけなのに。
親が犯罪者だというだけで。親が欲に忠実な異形だっていうだけで。
――――世界は僕らの思いを捻じ曲げて、気狂いだって騒ぐんだ。


親に倣って、只管純粋に、罪を犯しながら生きていくことの辛みさえ知らず。
親に倣って、目障りな客を捌いて転がして焼いてケチャップかけたハンバーグにすることの何が悪いというのか。


罪の味すら知らない人間が普通と豪語して一般論に成り下がったこの世界。
我慢だけが積もり積もっていくこの人間社会。
隠れて誰が何を考えてるかの底しれない、酷く勝手な現実世界。
一般論から外れた思考は異常者だという現実論。


反吐が出るね。
自分を護ることで精一杯で、僕らの本当なんてみんな、知ったこっちゃないんだ。


だから、いずれこの世界は君を殺すのでしょう?
得したがりな人間が、やがて君を殺しに来るのでしょう?


君にとっては終わりの日。
だけど僕にとっては。
そして君にとっても実はそれが、始まりの日なんだよ。
それが僕なりの理想論。
本当にするべき理想論。


早く死んでくださいなんて言わないさ。
ただ、愛しているだけだ。
君のことを、初めてあの桜の下で出会ったあの日から―――――――


だから僕は待ってるんだよ。
今の君を大切にしながら、
やがて君が、世界から外れてしまう日を。


大丈夫。
怖くなんかないんだ。
怖い事なんて何もないんだよ。
ただ少し、レールの上をひた走る君のその綺麗なタマシイを、此方側に引っ張り込むだけだから。

輪廻の因果をぶち壊して、帰り道を燃やしてなくしてあげるんだ。
その時が、僕と君の二度めの始まり。
君がそれを許すならば、僕は。








生きたゲームデータをリセットして、



死ぬことすらも知らないまま、

ずっとずっと、一緒に居ようね。







私に冷たいこの世界が、お前に優しい訳がない
(もしも君が死んだなら、終わりのないこの生温い世界でずっと)







お題配布:累卵





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