夢食いの夢、夢食いの現実



肩で息をして、少し息を整える。

それでもまだ心臓がバクバクするのは走って階段をかけ上がったからか、はじめちゃんに手を引っ張られたからか。

どっちにしろ、落ち着け!あたしの心臓!!

「名前」

「えっ、」

突然名前を呼ばれて声が裏返った。

次に何を言われるのかずっとはじめちゃんの目を見ていたけど、
はじめちゃんもずっとあたしを見ている。見つめあってる。

でも沈黙が長すぎる…。

「なに?どえかしたの?」

ああ、もう。どうかしたの?って何だよ。

もとわといえばあたしがはじめちゃんに用事があったんじゃないか!


「あの、さ…写真、……見た?」

直球に聞くのが一番だと思う。

「そうですね。言いたいことは山のようにありますが、それはまた後にしましょう。
ええ、見ましたよ」


…だよね。

はじめちゃん学校来るの早いもんね…。


「やっぱり。言いたいことは今言うのが一番でしょう。今言います」


「はい…」


あなたの軽率な行動がこのような事を招いたんです。

こんなこと言われそうだな。お説教の時間が始まるな。





「名前、僕があなたをからかい過ぎていました。僕が正直に自分の気持ちを名前に伝えていたらこのような事態にはならなかったでしょう。本当に申し訳ありません。

僕は名前が好きなんです。愛しています」

一瞬、何を言っているのかわからなかった。
え、え?はじめちゃんがあたしを好き?愛してる?
ア イ シ テ ル ?


「ふふ、何を言っているのかわからない、とでもいうような顔をしていますね」

「あた、あたしもはじめちゃんが好き。愛してる」

はじめちゃんはクッ、と笑って

"知っています"って…


「めでたく結ばれた僕たちですが、赤澤が厄介ですね。彼をどうするか考えましょう」

はじめちゃんはあんなあたしを見て幻滅しないのかな。

「あたしのこと汚いって思わないの?」

やっぱりクッって笑う。あたしの好きな笑い方。


「どうして僕があなたを汚いと思うんです?僕はただ赤澤と素直に言わなかった僕自身が憎いだけですよ」


鼻が痛い。目が熱くなる。自然と口がへのじになる。

「どうして泣くんです?ほら、こちらに来なさい」


ぎゅっ、とはじめちゃんに抱き締められた。
はじめちゃんの胸は見た目の華奢さからは想像出来ないような広さで、
暖かくて、あたしと同じくらい胸がドキドキしてた。

それでも頭の中で赤澤に犯されたことがフラッシュバックして体が震える。

「大丈夫ですよ。赤澤は僕らを引き離そうとしますが僕が名前と離れるわけがありません安心してください」

そう言われて、更に涙が出た。

それでも安心しきれなくて、どこかもやもやする・・・







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