おとめじゃなくておとめん!

「……俺じゃ駄目なのか」

エースちゃんを観察していたら、急にマルコに引っ張られというか半ば引きずられ、誰もいない部屋に引き込まれて言われた一言目がそれである。

「……え?何が?」

訳がわからず俺がそう聞き返すと、マルコが喉から絞り出すような声でこう言った。

「だからっ……エースじゃなくて、俺じゃ駄目なのかよい……!」

驚きすぎて思わずひっくり返りそうになった。
いや、普通に駄目だろ。

「ええっ……えっ……?マルコお前そういうやつだったの……?正直引くわ」

「お前にだけは言われたくねぇよ!」

ああ、うんそれ正論。間違ってない。

そんなマルコはむきになって叫んでいたが、実際は目尻に涙が浮かんでいた。
あ、これ冗談じゃなくてマジなのかやべぇ。正直冗談だと思ってた。マルコこんな冗談つくようなやつじゃないけどさ。

「いや、だって俺……お前のことそういう目で見れないんだけど」

ずっと親友みたいな兄弟だと思ってたし。
正直マルコでヌけとか言われたら俺は普通に動揺する。いや、つーか無理だろ兄弟でぬけるか!
あ、エースは例外だから。うちの島じゃノーカンだから。

「、可愛くなればいいのかよい」

「……んーん?」

いや、そういう問題じゃないだろ。
俺的にマルコっていう時点でアウトなんだよ。わかるか?今まで親友だったのが恋人だとか愛人だとかセフレだとかになられてみろ。生理的に受け付けないだろうが。
だからマルコの時点でアウトなんだ。マルコのことは確かに好きだがそういう好きじゃないんだよ。

「……じゃあ、俺がナマエ好みの男になる。それならいいのか」

「……んーんんん?」

え、いや、お前本当にそれでいいのか?というか好みの男ってなんだよ。男として大丈夫なのかお前。というか俺のことそんなに好きなのか。そんな盲目的なのかよ。

ああ、なんかもう訳がわかんなくなってきたぞ。どうしよう、俺の兄弟であり親友のマルコが盲目的な乙女だった。いや、乙女じゃなくて乙男か。

一周回って、俺がマルコの好みから外れればいいんじゃねぇのとか思い始めた。でもマルコの好みとか知らねぇ。笑うしかない。


 

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