変態につける薬はない
「な、なんて可愛いんだ……」
俺は思わずそう呟いた。 いや、だって可愛すぎるだろ、反則だろうあれは。 なにあの可愛い生き物。後ろからぎゅっと抱き締めて、あのふわふわな髪の毛をくしゃくしゃになるまで撫で回してうなじに顔を埋めながらすーはーすーはー深呼吸して匂いを数時間嗅ぎ回したい。むしろ胸を手でまさぐりたい。そうしたら恥ずかしそうな顔をして「バカっ、やめろよっ」て言われでもしたら思わず耳をあまがみしてベルトに手をかけるかもしれない。
「ハアハア……エースかわいいよハアハア」
まあ、そんな息の荒い俺の視線には露知らず、楽しそうにサッチと会話をするエースは天使に違いなかった。
ふっふっふ。そんなに油断していたら狼さんにたべられてしま 「ナマエ、なにやってんだよい」 急にそう後ろから声をかけられ、俺は驚きのあまり「ひいっ」と声を上げてしまった。不意打ちをくらったために余計驚いた。
そして後ろを見ると、俺を怪訝な表情で見下ろすマルコの姿が!
「な、なんだマルコか。驚かすなよ。危うく心臓が止まるかと思った」
「いや、そんな怪しい行動してるナマエが悪いだろい。何やってんだ」
まるで犯罪者でも見るかのようなの目線に俺は少し傷ついたが、淡々と事実を告げる。
「なにって、天使のような可愛さのエースを目に焼き付けているにきまってるじゃないか」
そう、さも同然といったような表情で言ったら、今度こそマルコが俺をまるで汚物を見るような目で見てきたので心が軋んだ。 養豚場の豚を見る目より酷い。哀れみの目線ではない。これはゴミを見る目だ。 俺のプラスチックハートをそんなにも痛め付けたいのかこいつは……っ!
「……いい加減自重しろ変態」
「なん……だと……!これでもまだエースの部屋のもの盗んでないし!でもエースってよくサッチといるけどもしかして付き合ってるのか。もしかして、もう俺の入る隙はないのか……!」
「んなわけないだろい!」
「ならよかった。あーあ、エースのパンツほしいな。くれないかな。出来れば洗ってない使用済みの」
そう言った所で、マルコの表情がゴミを見る目から害虫を見るような目になってきた。この兄ちゃん冷たい。可愛い弟がいい。 というわけで俺は危険を感じ癒しを求めて走り出した。エースの方へ。
「うおおおおエースううううう結婚してくれえええええ」
そう叫びながら猛スピードで走ってくる俺を視界に入れてエースはぎょっとしたような表情をすると、
「じゃ、じゃあなサッチ」
と言ってひきつったような笑みで笑って俺の向かってくる方向とは逆に走り出した。つまり、逃げた。
「何で!何で逃げるんだエース!結婚しよう!むしろパンツくれ!」 「い、嫌に決まってんだろ!なんでおまえいっつも俺を追いかけてくんだよ!」 「それは君にI love you!恋してるからだ!結婚しようエース。二人の愛の巣をつくろう!」 「……だ、だれか助けてくれ……!」 「エース、先にご飯にする?それともお風呂にする?それとも、わ、た、」 「だれかたすけてくれえええええ」
「あいつら、なんだかんだで仲いいよな」 能天気にも笑ってそう言ったサッチに、マルコはただしかめっ面をしているしかなかった。
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