ぱんくはざーど3
「……っぐ」
俺は唇をきつく噛み締めた。
ああ本当に、酷い屈辱だちくしょう。 なんとか俺の体に巻かれている鎖を引きちぎることは出来ないかと腕に思いっきり力を入れたが、鎖は相当頑丈らしくびくともしない。マジかよ。
何故こんな状態に陥っているかといえば、あの後、スモーカーが来たせいで2対1という不利な展開になった挙げ句、ローにスッパーンと体を真っ二つにされたのである。 そして気がついたら麦わらの一味の船の上で、しかも鎖で簀巻きにされていた。海軍の船かと思ったらまさかの麦わらの一味。訳がわからない。本当、嘘だと言ってくれ。
なんか横にシーザーもいるし。何でお前捕まってんだよ、おかしいだろ。「ナマエ何とかしろ」とか言われても無理だから。人使い荒いんだよ。でも鎖で捕まってるシーザー可愛い。あれだけ大口叩いといて捕まるとか、マジ無様で笑えるんですけど。 ……あ、それ俺もか。なんか泣きそう。
歯ぎしりとか、そこら辺にいる奴等にガンを飛ばしてやろうかと思ったが、大人げないので止めにした。俺は紳士だから大人しく座っていることにする。 くそ、ローのやつ絶対許さねぇ。涼しそうな顔しやがって。ぶん殴りてぇ。
「……ロー」
「なんだ」
そのローの余裕の表情が凄く腹が立つ。 何で俺が鎖で縛られて、お前は余裕の表情で俺を見下ろしてるんだ。おかしいだろ、逆だろ。配役逆だろ。そもそも数時間前まで逆だったじゃねぇか。
というか、俺は縛られて興奮する派の人間じゃない。縛って興奮する派だ。 どうせならローが縛られてる姿が見たかった。俺の縛られてる姿とか、いったい誰得なんだよ。誰も得しないし寧ろ俺は損してるんだが。
こんな屈辱を受けたままでいられるか。 ローが少し近づいて来た所で、俺は一瞬の隙を付いて地を蹴った。そして、ローまで一気に間合いを詰める。それから何の躊躇いもなく思いっきり足を振りかぶると、ローに向けてフルスイングした。
「……ッ、」
手が使えないなら足を使えばいいじゃない。いやあ、昔の先人様はいいこと言うな。 ローは唐突なことで一瞬反応が遅れたようだが、だいたい予測はしていたのか俺の蹴りを受け流してすぐに俺から距離を取る。 周りの麦わらの一味は、急に攻撃を図った俺を見て驚いた表情をする奴がいたり、静かに戦闘体制に入る奴もいた。 いや、でも多分ローを一発で落とせなかった時点で俺、負け確定な気がするんだが。
「ぅぐ、あぁッ、」
次の瞬間、俺はあまりの痛さにめまいがして、胸を押さえて思わずその場に膝を付いてしまった。 いってえええええええええ。な、なんだこれ本当に痛いんですけど。 立っていられないレベルで痛い。
痛みに耐えつつローの方を見ると、やはり手には心臓が握られていた。 それ、俺のだよね。やっぱりだけど、そりゃ持ってるわな。俺を鎖巻いただけでそのまま放置とかするわけないな。まあ知ってたよ。ちくしょうが。
「わかったら大人しくしてろ」
何でお前に俺が調教されてるんだよ!ふざけんな!もしかして今までの仕返し?仕返しなのか?やめて、私に乱暴する気でしょう?エロ同人みたいに。エロ同人みたいに。 屈辱的すぎて涙でてきそう。
「俺をどうする気だ」
「さあな」
そもそも、俺ぜったい海軍に引き渡されると思ったんだけど。 たしぎちゃんもスモーカーも激おこだったし。絶対俺の首欲しがってたよね。 なんなの、あいつら頑張って説得したの?俺の昔の知り合いだから!知り合いだから!とか言って海軍頑張って説得したの?
でも実際、俺を海軍の奴等を説得して連れてきてもリスクしかないと思うんだが。むしろ海軍に明け渡した方が後の処理すごい楽だろ。 なんなんだ、ローくん何企んでんだ。
「……ナマエは、俺のことどう思ってるんだよ」
「サンドバッグ」
ローが真面目な表情で聞いてきたので、俺はすぐさまそう答えた。慈悲はない。 外野から「えっ」とか「酷ェ」とか聞こえるが、無視である。
「じゃあなんでアンタ、トラ男が殺されるって聞いて動揺したみたいだけど、それはなんでなのよ」
「……」
長いオレンジの髪の女性が訳がわからないといったような表情でそう聞いてきて、思わず回答に困った。
なにこれ羞恥プレイ?それ聞いてくるのかよ。 まあ、俺が少し動揺したり躊躇ったりしてるのバレてるわな。バレてないわけないわな。ローもどうせそれ聞きたかったんだろうけどさ、止めてくれ。 なんでって、だってローくんが可愛すぎるから!とか言ったらなんかまた心臓握られそう。怖い。
「ローが好きだから」
「……、は」
俺がそう言うと、聞いていた麦わらの一味たちは呆気にとられた表情で「え?」と呟いた。 ローの方は、目玉飛び出るんじゃないかっていうくらい目を見開いて動揺している。いや取り乱しすぎだろ、何なんだお前。なんか少し恥ずかしそうだし。もしかして照れてんのか。なんだコイツちょっと可愛いとか思っちゃったじゃねぇか。
「冗談だ」
「……」
「ぐ、いぎ、っ」
すみませんでした。 だから当て付けみたいに無言で俺の心臓握るの止めろよ。本当止めろよ。お前の心臓握って可愛い可愛い思ってたの謝るから止めろよ。
ちょっと茶目っ気出しただけでこの仕打ちとか、本当酷い。ロー鬼畜すぎる。 これでまた別の扉開いたらどうしてくれるんだ。ドSからドMになるとか、洒落にならないんだが。そのときはお前が責任とれよ。ちくしょう。
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