ぱんくはざーど2


それから数分も経たない内に、研究所からロー達が閉め出されて「うわ、まじシーザー鬼畜」とか思っていたら、なんかあいつら普通に檻から逃げ出したらしい。
まじかよ。死亡フラグ回避とか。そもそも海楼石でがんじがらめにされてたのにどうやって脱出したんだ。

何故か嬉しいような、面倒くさいような、よくわからない感覚に陥ったのだが、もう一回ローを殴れるならいいんじゃないかな。ローちゃんまじかわ。殴らせろ。
ロー!ボクシングしようぜ!お前サンドバッグな!

「……ローをか」

「あぁ、殺せ。できるだろ?」

そう思って意気揚々としていた所で、ドフィにローを殺せと言われました。
まじかよ。ローくん死亡フラグ乱立しすぎだろ。
しかもドフィ激おこマジギレじゃないか。きっと電伝虫越しで青筋立ててるのだろう。そんなドフィも可愛いけど。愛してる。
まあ、ローのせいでシーザー殺されたりなんかしたら大変だもんね。ドフィの頼みなら仕方がないか。


それにしても、ローを殺すのか。
殴るのも蹴るのも簡単に想像できるが、殺すとなるとどうだろう。

ローがどういう苦痛の表情で死んでいくのかと言われれば、気になるといっちゃあ気になるし、見てみたいと思う。
きっと俺を憎悪の表情で睨み付けて、苦しみながら死ぬのだろう。苦しそうに嗚咽を漏らして、憎しみの言葉を呟いて、だんだん顔が青白くなって呼吸が浅くなっていくのだ。

それでも俺が殺すつもりでいたぶっていると、時間が経てば首を締め上げても蹴りを入れても殴っても踏みにじっても何の反応もないローが出来上がる。その瞳は一生、光を宿すことはない。

「……」

どうしてか背筋がうすら寒くなって、一旦思考を停止した。生々しく想像しすぎて気味が悪い。
人形みたいに何の反応も示さないローとか、なんだよそれ。そんな完成度の高いサンドバッグとか望んでねぇよ。というかやっぱり反応ないと、加虐心まるでくすぐられないわ。
ローを海楼石の鎖で簀巻きにしてドレスローザ持って帰ったらドフィ許してくれないだろうか。無理か。



「ロー、お前を殺せとドフィから言われた」

「……ああ、そうだろうな」

目の前のローは、至って落ち着いた表情でそう言って俺を睨み付けた。別にどうってことない、予想していたというような表情だ。
なんだよ、ちょっとくらい焦ってくれたっていいだろ。それともあれか、俺とか余裕で倒せるしマジ雑魚だわとか思われてんのか。ゆるすまじ。

「ナマエは、俺を殺したいのか」

「……」

ローに真っ直ぐ見据えられ、そう言われた。いや、何言い出してんだコイツ。
ドフィに言われたんだから、そうに決まってるだろう。ドフィの言うことは絶対で、俺の感情が任務に入り込む隙なんて無いのだ。
ドフィに言われれば、昔から自分を慕っている部下をいたぶることも、殺すことだって躊躇わない。G5の奴等も、たしぎちゃんもスモーカーだってそうだ。勿論ローだって同じに決まってる。

「ぐっ、がああああッ……!」

唐突にどうしようもない苛立ちを覚えて、持っていたローの心臓を握りつぶす勢いで握ると、目の前のローが苦しそうに悶えてああやっぱり可愛いななんて思った。

しかし、何故か苛立ちはなくならない。情とかあるわけないだろ。ローが死んだらなんか嫌だとか思うのも、俺がローを殺すのを躊躇ってるのも、全部ローが可愛いせいです。論破。

「……殺したいなら、殺してみろよ……!」

やべぇローまじかわ。その挑発的で生意気な顔に拳を叩きつけてやりたい。

心臓を握りつぶそうと思えば、いつでも握りつぶせるだろうし、今すぐにローの首を締めて殺すこともできる。殺そうと思えば殺せるのだ。
しかしながら、ローのその顔が一生見られなくなるのはどうかと思う。

「殺したいわけじゃない」

「……ッ、」

俺は殴って蹴って泣かせたいだけで、そういう性癖なだけで、決してローが憎いわけでも殺したいわけではない。 そんなことはわかっている。
それでもこれ、残念ながらドフィの命令なのよね。

目を見開いて俺を見るローを見て、ああやっぱり可愛いと思いつつ拳を振りかぶった。

 

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