どっちもどっち
※ドフラミンゴのキャラ崩壊
「何なんだあいつ。訳がわからねぇ」
帰ってきた途端、ぶすりとしたしかめっ面を隠しもしないでナマエがそんなことを呟いた。
ナマエがここまで機嫌を悪くするのはなかなか珍しい。 いつもなら、帰ってくるなり横でニヤニヤと楽しそうに笑いながら「病院くれ」だの「新しい医学書が欲しい」だの「患者はいないのか」だのと聞いてきたりだとか抱きついてきたりだとかベタベタとくっついてくる筈だ。しかし、今のナマエは口をへの字に曲げて腕をくみ、不貞腐れているような表情をしてどかっとソファーに座っている。 考え事をしているようで、こちらの存在には気がついていないようだ。
考えなくてもわかる。シャボンディ諸島で、どうやら何かあったらしい。
「やけに機嫌が悪いじゃねぇか。何があった?」
「……ドフィ」
声をかけるとナマエはぱっと顔を上げ、さっきの表情とはうって変わって嬉しそうな表情をし、すぐに駆け寄って抱きついてきた。 普段の表情はあまり変わらない奴だが、こういった過剰な変化はどうも分かりやすい。
甘えたかったのか、それともただ抱きつきたかっただけなのか、どちらにせよナマエが腰に抱きついて離そうとしないため取り敢えず好きにさせておくことにする。 コイツに好かれているのは別に嫌なことでもないため、振り払うのも癪だ。
「シャボンディ諸島で、変なやつに会った」
ナマエはそう言うと、また少し不機嫌そうな顔をした。 変なやつなんてこの世界を探せばいくらでもいるだろう。しかし、ナマエの様子からすると、そのへんにいるような変なやつとはまた違うようである。
「あァ?どう変なんだよ」
そう聞くと、ナマエはまだ何か考えているのか眉間にシワを寄せてぽつぽつと、その“変なやつ”だという人物について始めた。
なんでも、今日会ったその女は、ナマエをトラファルガー・ローと呼び、人探しを頼んできたりと妙に馴れ馴れしかったらしい。しかも、何故かすがるような目を向けられて気持ちが悪かったと。 なるほど。それがナマエにとってなかなかに不愉快だったらしく、今機嫌が悪いというわけか。
「……その女、知り合いか?」
その問いにナマエは「まさか」と呟き、「あんな女は見たことねぇよ」と眉間にシワを寄せたまま難しい顔をして言う。 ナマエに心当たりはないようだ。しかし、それなら矛盾が出てくる。
「じゃあ、なんでお前の名前知ってんだよ」
「……しらねぇ」
それはナマエにもわからないらしく、ナマエは不思議そうに少し首を傾げてそう言った。 たしかにコイツの名前はローで間違ってはいないだろうが、十数年近くその名前を呼ぶ奴はいなかった。それなのに、そいつはどうして知っているのか。
その女は話を聞くに、ルーキーの麦わらの一味の船員のようだ。
「そんなに気持ちが悪いなら殺してやろうか」と言えば、ナマエは少し考え込んだ後に「いや、まだいい。何者かわからないしな」と言って、少し首を横に振った。 そのナマエの言い方から察するに、その女について少し調べてみようと思っているのだろう。 なんせ、ローという名前を知っているのは明らかに不自然だ。考え難いが、もしかしたらこちらの情報が多少なりとも漏れているのかもしれない。 そうだとしたら不味い。
名の知れたルーキーでも、そこそこの部下を数人送ってしまえば、すぐ死ぬだろう。もしくは殺し屋にでも頼めばいい。 しかしナマエがまだいいと言うなら、無理に殺す必要もない。その女の秘密がわかれば殺してしまえばいいのだ。 そう、ナマエに悪影響なら、殺せばいい。殺そうと思えば、すぐに殺せる。
「まあドフィの敵になるなら、真っ先に殺すけどな」
急にナマエが、真っ直ぐにこちらを見て言った。 その目には疑いようもない、崇拝にも近いような深い信頼やら愛情やらが見てとれる。
「……そうかよ」
そう呟いて思った。きっと自分も、同じ目をしているのだろうと。
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