なんかすれ違うようだ

「ローでいい」

「え?何が?」

「だから、トラファルガーくんとかいつまで長い名前で呼んでんだよ」

1ヶ月経過し、最近名前呼びの許可が出ました。やったね。努力の甲斐がありましたよ!でも意外に早かったな。3ヶ月は掛かると思ってたのに。
しかし、これでトラファルガーくんとかクソ長い名前を連呼しないで済むね。やったぜ。

でも、ローくんか……俺は何気にトラ男くんって呼びたかったんだけど。たしかエースの弟に呼ばれてるの聞いたし。トラ男くんって名前いいよね!なんかあの、動物が喋る幼児向けアニメのしまたろうに出てきそうじゃない?


「あ、ナナシくん!」

「うお、ヒロインちゃん」

マイエンジェル!マイエンジェルじゃないか!
しかし俺のマイエンジェルは俺の事なんて目もくれずにローくんの方に視線を向けている。世の中って無情よね、この落差なんなのよ。でも仕方ないのよね、これが現実なのよね…!わたし、あきらめないんだから!

「あの、ローくんもう帰るよね、一緒に帰らない?」

うおおおお出来ることなら俺が一緒に帰りてぇぇぇ!
どんなにヒロインちゃんと俺の家が逆方向でも、どんなにヒロインちゃんの家が遠くても、俺はルリアちゃんをちゃんと家まで送るよ。だから俺と一緒に帰ろうよ、無理ですよね知ってます。

「いや、俺はコイツと帰るから無理だ」

「……え?えええええ?」

いろいろ考えていると、何故かローくんに腕を引っ張られてそう言われ、放心状態になった。

いやいやいや、無情すぎやしませんかねローくんよ。だっておかしくね?そこは帰るべきだろ一緒に。こんな可愛い子に一緒に帰ろうって言われてるんだぞ?何でそれ断って野郎と帰ろうとしてんだお前。
なんなの?ホモなの?俺掘られるの?やめてくださいしんでしまいます。俺は健全な男子でありノンケだから。男に興味ないから。
あと、お前と俺の家方向同じだったっけ?たしか違うだろ!

「じゃ、じゃあさぁ、私も一緒に帰っていい?」

それでも諦めないヒロインちゃんどんだけローくんのこと好きなんだよ。羨ましいなローくんが。ちくしょう。俺なんてどんなにアピールしても振り向いてもらえなかったのに。
なんだ。俺に何が足りないんだ。情熱理想理念頭脳気品優雅さ勤勉さ?それとも早さか?なんだ全部か。おや何故か目から汗が。

「……」

「う、うんうんそうだね!せっかくだから三人で帰ろうよ!そうしよう!」

ローくん顔怖いよなんだよその顔!目の下の隈のせいもあって怒ってるときのエースといい勝負の悪人面だぞお前。というか何で俺の周り悪人面多いんだよ、嫌だわ!
とりあえずエースが来ないうちに退散しよう。あいつ来たら余計ややこしくなるもんな多分…!

んで、三人で帰ることに、なったわけだが。

「……」

「……」

なんか、気まずいんですが……!
何なんだよ、何かなんでもいいからしゃべって、何か話して!すごい居づらいし怖いわ。なんか雰囲気が葬式行くみたいになってるんだよ。
というか今気が付いたけど、ヒロインちゃん家の方向こっちじゃないよね。なんだそんなに俺と一緒に帰りたかったのか嘘ですそんなわけないよね。ローくんと帰りたかったんだよね。知ってるわ。
これ?何言ってんのだから汗だってば。

「ロ、ロ、ロ、ローくんってさ!なんか、好きな食べ物ある?甘いものとか好き?」

沈黙を破って話しかけた俺すげぇ。誰か拍手してください本当に。

「それ、私も気になるなぁ」

なんとかローくんと話そうとするヒロインちゃん天使。あー俺、ヒロインちゃんマジ天使しか言ってないわ。でも事実だから仕方ないね。

「特別好きだと思う食べ物はない。甘いものは嫌いじゃない」

ローくんちょっとまて。お前もうちょっと話題が広がりそうな答え方できないんですか。受け答えに困るわ。そうなんだしか言えんわ。

「そうなんだぁ。私もね、甘いもの好きなんだよー」

う、うおおおヒロインちゃんのアピールくそかわええええええ。

「甘いもの好きな女の子って可愛いよね!ローくんよ!」

あああヒロインちゃんマジ可愛いわ天使だわ!隣にローくんがいるから少し恥ずかしそうに言ってるのもveryグッドだわ。
あ、俺多分今デレデレのひどい顔してるんだろうなー頬が緩むのは仕方ないね。

「……お前は甘いものが好きなやつが好きなのか?」

「は?え?いやまあ確かに甘いもの好きな子って可愛いとは思うよ」

なんで俺に話題振ってくるんだよローくん。しかもなんで俺の好みの話なんだよローくん。なんで君の横に超絶美少女のヒロインちゃんがいるのに「そうなんだ、可愛いね」の一言くらい言えないんだローくん。なんなの?君は空気読めないの?
まあ、エースいわく俺も空気読めてないらしいけどさ……。

「ね、ねぇローくん!私、あそこ寄りたいなぁ!」

そう言ってヒロインちゃんが指したのは、屋台のクレープ屋である。やだ、選択も可愛い。ヒロインちゃんがクレープ食べてるとこ見たい。

「そうか、じゃあな。行くぞナナシ」

「……ファ!?え、え、ええ?」

いやいや、ちょっとまてよ。そこはお前がヒロインちゃんにクレープ奢るところだろ、いい加減にしろ!
なんなの?ローくんお前そんなに早く帰りたいの?帰って見たいアニメでもあるの?
だからローくん腕を離してください。何故俺の腕を引っ張る。ヤメロー!ヤメロー!

結局俺の腕を引っ張っていったローくんにヒロインちゃんも諦めたらしく、なんもないまま何故か二人とも俺の家までついてきました。
結局なんだったの。もうわけがわからないよ。


 

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