好きな人ほど振り向かないようだ

この作戦を決行してから二週間ほど経った。


あれから結構トラファルガーくんと仲良くなってきたのでね、そろそろ本題に入っていきましょうか。
これからが中盤戦、お遊びは終わりよトラファルガー・ロー!ここから本題に入っていくんだからな!

「ねえ、トラファルガーくんってさ、好きな女の子のタイプってどんなの?」

というわけでそんな感じで単刀直入に聞いてみましたヒャッホイ。俺の先制攻撃を食らえ!
さあ、どんな反応を見せるトラファルガーくんよ!

「そう言うナナシのタイプはどうなんだ?」

カウンタートラップ……だと……!?
とんだ罠だぜ。いやいやいや、俺はまだ負けてない。まだ俺のターンは終了してないぜ!

「俺のタイプはな!清楚で家庭的な人だよ!それでお菓子作りも上手かったら上出来!」

言い切った、ドヤァ。という感じでウインクすると、目の前のトラファルガーくんは考え込むようにして黙った。
言ったじゃん、恥ずかしさなんてかなぐり捨てて言ったじゃん。だからなんか反応してくれ悲しいだろ。ウインクキモいとかでもなんでもいいから言ってくれよ。

「……それで!トラファルガーくんはどういう子がタイプなの?」

話題転換!今度こそ逃がさねぇ!
抜け目なくそう俺が聞くと、トラファルガーくんは少し言葉を濁して、きっぱりと言った。

「天然で馬鹿なやつだな」

「え、そうなの?へー、なんか意外」

なんだ、冷静に物事が判断できるやつ、とか金使いが荒くないやつ、とかそんなお堅いこと言うかと思ったのに。意外や意外。
なんだ、トラファルガーくんって天然でドジッ子属性の子が好きだったんだね。たしかに、そんな子もなんか惹かれるところがあって可愛いな。たしかにわかるわその気持ち。

「そうだ、トラファルガーくん、このクラスのヒロインちゃんなんてどう?可愛くない?」

ささっと話題提供も忘れない。
俺ってば抜け目ないな!これは将来探偵になれるかもしれない。自分のありすぎる才能が辛いわ。

「……ヒロイン?なんだ、お前そいつのことが好きなのか?」

「うぇぇぇぇぇい!?そ、そ、そそそそそんなわけなななないじゃないですかー!やだー!」

なにこいつ超能力なの?怖いんですが!

かなり焦ったが、なんとかそうやって否定したらトラファルガーくんは相当訝しげな顔をしつつも「……そうか」と言ったので納得したみたいだった。
超危ない。トラファルガーくんが読心術持ちとか聞いてないんですが。なんなの?新人類なの?この人。


××××


「天然で馬鹿なやつがタイプって言ってたよー」

「え、ローくんが?そうなんだ。わかった、ありがとうナナシくん」

そう言ってメモをとるヒロインちゃんかわいい。
やっぱり清潔感のある、清楚な感じの女の子っていいよね。やっぱヒロインちゃんかわいいよヒロインちゃん。俺の天使。

「ねぇ、ナナシくん。なんかナナシくんってさ、すっごくローくんと仲が良いよね」

「え?あー、言われてみるとそうかもしれないねー。いろいろ聞き出すには仲良くならないことには無理だし」

「……そっか。でもなんかさぁ、お弁当作ってもらってるって聞いたけど」

なんだかヒロインちゃんが不安そうな表情をしている。
これはあれか!俺をトラファルガーくんにとられて不安とか!違いますよね知ってます。逆ですよね、わかってます。
自惚れなんてして後悔するのは己なので、俺は過度は期待なんてしないぞちくしょう。
まあ、たしかにあれから二週間、休み時間は隙あればトラファルガーくんのところに引っ付いて話してるもんな。でも俺ホモじゃないし。

「いや、あれは残り物貰ってるだけだからね。弁当作ってもらってるとは言えないんじゃない?」

「うーん、そっかぁ……」

上目遣いで俺を見るその瞳に、乾杯。

やっぱりヒロインちゃんがすごく好きです!やっぱり俺は絶対女の子が好きです!

「大丈夫だよ、第一俺は男だしね!そんな不安そうな顔しなくても俺別にトラファルガーくんとらないし!不安そうなヒロインちゃんも可愛いよ!」

そう言うとヒロインちゃんは少し安心したように笑った。なんだ、ただの可愛い天使か。
ああ、ヒロインちゃん俺のこと好きになってくれないかなー。無理か。
でも、せめてもしトラファルガーくんにフラれたら俺のこと好きになってほしい。無理か?いや、まだワンチャンあるはず!

「おい、ナナシ帰るぞ」

「あー、エースじゃん」

ガラリと教室のドアを開けてエースが入ってきた。
こいつ、毎日毎日違うクラスなのに飽きもせず俺の教室まで来るなんて、どんだけ一人で帰りたくないんだよ。
まあエースって意外と寂しがりやだから、一人で帰るの心細いのかもな。なんだよお前、そんな元ヤンのくせして乙女か。

でもお前、たしか俺じゃなくとも他に友人いたよな。弟もいるし。そいつらと帰ればいいのに。
あ、もしかして、そんなに俺と帰りたいの?俺のこと好きなの?やだー!俺掘られるじゃんこわーい!

「エースくんこんにちは!」

「……おう」

エースは挨拶してきたヒロインちゃんを少し見てそう素っ気なく返すと、俺の腕をぐいぐい引っ張って「行くぞ、ナナシ」と言って急かしてくる。
なにこいつこの天使と引き離す気満々じゃないですかー!しかもなんか顔怖いし!引っ張ってる腕が地味に痛いし!

もう少しヒロインちゃんと話していたかったけれども、エースの顔が怖いのでヒロインちゃんに手を振り素直に退散することにする。

「エースさん本当にどうしたし」

「……コンビニのアイスでも食うのか?」

なに?コンビニのアイスだと?そんな手にこの俺が釣られると──いやいやうそだようそうそ!食べますはい食べます。今日はヒエヒエくんの南国パイン味がいいな。


 

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