友達は多い方がいいようだ

「なあ、トラファルガーくん!何読んでるんだ?」

取り敢えず休み時間。
席に座って静かに本を読み、誰とも話そうとしないトラファルガーくんにそう話しかけてみた。まずは人って会話から距離を縮めていくものよね。

「……そんなこと聞いてどうするんだ」

うわ、すごいしかめっ面なんだけど。何、そんなに俺に話しかけられたのが不愉快なの?でもめげないんだから!
というか、なんでこんな無愛想なやつルリアちゃん好きなんだよ。俺の方が話しやすいし優しいはずなのに。なんなの?クール?近頃の若い娘はこういうクールボーイが好きなの?俺もこういう路線でいけばモテるの?いや、キャラもう固定されてるし無理だな。

「いや、気になっただけー!見せて見せて!」

そう言ってトラファルガーくんの読んでる本を覗き込むと、なんかよくわからん小さい文字の羅列がびっしり。
なにこれ、学生が読むもんじゃねぇだろこれ。
専門書とかそういう系?あ、もしかして呪術とかの類いの専門書ですかね。なんだただの魔術書ネクロノミコンの元本か。トラファルガーくんなんてもん学校に持って来てんだ。

「俺、五行以上の文章を見ると脳震盪起こす病気なんだ」

「……そんな病気はねぇだろ」

「いや本当だって。だって勉強したら頭痛くなるから出来ないからな」

「それ拒絶反応じゃねえか。どんだけ勉強嫌いなんだよお前」

そんな会話をしていると、意外とトラファルガーくんと会話が続いていることに気がついた。あれ、案外話せる。絶対ずっと無視されると思ったのに。

それからいろいろ会話を進めていくと、読んでいる本が医学書で、トラファルガーくんは医者を目指してるんだということを知った。
なにこいつ、この時点で人生の勝ち組目指してるとかヤバすぎる。

もっと何か聞き出そうと思ったら、そこで休み時間終了のチャイムが鳴った。あー早いなもう時間切れか。でもなんかけっこういい感じじゃないか?ちょっとは仲良くなれた感じだし。よし、これから頑張っていこう!


××××

放課後。

「いーいー感じだったー!」

「あー、そうかよ」

なんかエースくんすっげー興味なさそうなんですが。不貞腐れたような表情でこっちみんな。

「どうでもいい」

「よくない!聞きたいだろう!俺の作戦の状況!いい感じだった!これならトラファルガーくんと友人になる日も近いぞ!」

そう俺が言ったところで、エースが凄く微妙な顔をした。なんだ、お前もしかして俺の作戦が上手くいってるのが気に入らないのか。なんなの?他人の幸運は苦渋の味なの?

「お前の一番の友人は俺だよな」

「え?何聞いてきてんの?残念ながらそうだけど?」

悪意を込めてそう言うと、何故かエースは「ならいい」と言って黙った。

いや、よくないだろ。なんなんだよお前、結局何の確認だったんだよ。


そう聞いても答えてくれず、そうして今日という日が過ぎていったのだった。なんだったんだよ。


 

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