作戦を始めるようだ
席替えでたまたま隣の席になった、トラファルガーくん。 取り敢えず仲良くなるために「お前隈ひでぇな!これからよろしく!」って言ったら“急に何言い出すんだコイツ”みたいな表情されて引きぎみに「ああ……」と返された。 確実に“うわ、なんか変な奴が隣の席になったな”って思ってるぜこれは。 でもワタシ、めげないんだから。ぜったい仲良くなってやるわよ!
と俺が意気込んでいるのも、まあちょっとした理由がある。
なんと、俺が思いを寄せている女の子、ヒロインちゃんに「私、ローくんが好きなんだけど、ナナシくん席隣だよね。協力してくれない?」みたいな感じで、二人の仲を繕うようにお願いされたのであった。 そりゃあ惚れた弱味ですよ。語尾にハート付けられてお願いされたら断れませんがな。男って愚かな生き物ね。 え、涙?違うねこれは汗だよ。ははは
「お前って、ほんっと馬鹿だな」
一番仲が良いであろう俺の友人エースくんは、無情にもそう吐き捨て可愛そうなものを見る目で俺を見てきた。やめて、その目は凄く悲しくなるから。なんなの?俺の周りには俺の敵しかいないの?
「というわけで、第125回!チキチキ“恋のキューピット☆大作戦”開始!」
「おい125回ってなんだよ!初めて聞いたぞ」
「説明しよう!恋のキューピット大作戦とは!俺の好きなヒロインちゃんの恋を、なんとかあの手この手で成就させようという作戦である!」
俺がビシッと指を指して高らかに告げると、エースはめんどくさそうに「そのまんまじゃねえか」と呟いた。
そして俺が「エースも協力しろよ!」と言うと、とうのエースは苦虫を噛み潰したような表情をして顔をしかめる。というかコイツ、顔はいいけどそこそこ目付き悪いせいでその表情はけっこう怖い。そばかすがチャーミングだとか、そんなことで緩和されるレベルじゃない。下手したらヤのつく職業の人だこれ。 でも、実際エースって結構な不良なんだよな。制服校則スレスレだし、不良グループともつるんでるし。 あれ、なんで俺こんな危ないやつと友人なの?
「というかお前、そのヒロインってやつのこと好きなんだろ?トラファルガーとくっついたらお前負け犬じゃねェか」
エースが呆れたようにそう言って俺を見た。 しかし、エースはわかっていないな。俺の真の目的が!
「意外!それは負け犬!フッフッフ、フーッフッフッフ!しかーし!もしかしたら俺がこの作戦を決行していると、だんだんヒロインちゃんが“こんなに尽くしてくれるナナシくんって素敵!格好いい!ちゅーして!結婚して!”とか言い出したり、なんてことが、もしかしたりしたりしなかったりしたらそんなことがあるんじゃないかなと!思っちゃったり!」
「そっちが目的なんじゃねぇかよ!でもな、そんなことはたとえ別世界でも、地球が五億回回転してもないから安心しろ。あと、その笑い方やめろ」
「グラララララ!勝利は我が手に!」
「その笑い方はもっと駄目だ!」
よし、覚悟しろよトラファルガー、お前には負けないんだから!というわけで第278回“君の恋路をダイナマイト☆大作戦”開始!
「おいさっきと題名違うぞ!」
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