エースとくっついたらしい

※キス表現とか下ネタ
※圧倒的ごり押し
※色々と酷い


どうしよう気がついてしまった。
とんでもない事実だ。なんかもう死にたくなるくらいやばいことに気がついた。もう俺、自分の事が信じられない。
俺、エースのこと好きだわ。

いや、友人としてとかじゃなく、恋愛感情的な意味で。あり得ないわ。そもそも俺はヒロインちゃんが好きだし、エースは男だし友人だし!
絶対好きになることなんてあり得ないのに、何故だか俺はいつの間にかそんなエースのことが好きになっていた。いつからかはわからないけど。

気付いたのは昨日。
エースが知らない女の子に告白されてるのを見て、なんかこう、心がモヤモヤして違和感を覚えた。それで、ああ俺エースのこと好きなんだって思ったんだよ。うわー!俺ホモだったの!?ありえねー!

でも好きになってしまったものは仕方がない!ここは全力でアピールして当たって砕けろ!

「俺、エースのこと好きだわ」

キリッ、という効果音がつくくらいにキメ顔で言ったら、目の前にいたエースが飲んでいたお茶を吹き出した。きたねーなおい。

「お前!急に何言い出すんだよ!馬鹿だろ!」

「なんで!馬鹿じゃない!好きだって気がついたから好きって言っただけなのに!というかエースくん顔真っ赤じゃーん純情でかわいいやつめ」

俺に怒鳴ったエースの顔は、今までに見たことがないくらい真っ赤だった。
野郎に好きって言われて真っ赤になるなんて、エースくんってば見かけによらずかなり純情なのね。知らなかったわ。

「お前が、急に変なこと言うからだろ……!」

さっきの態度とは裏腹にエースはそう弱々しく呟くと、俯いて黙り混んでしまった。

あ、やばいこれキモいって思われてる?
たしかに野郎に告白されたらいくら友人でもキモいよね!だってケツ狙われてんだよ!むしろ怖いね!

「……さっきのこと、本気かよ」

「え?本気って?」

エースが何を聞いてきているのかいまいちわからなかったので聞き返すと、エースは恥ずかしそうに「だから!好きっていうのは、友人としてか……それか……」とだんだん声が小さくなっていき、また黙り混んでしまった。

なんだ?今ここで“うん、実は友人として好きなの!冗談でしたー!”とか言ったら、今さっき俺が言ったことは無かったことになるのか。
たしかに、無かったことにすればエースとは友人でいられるし、ずっと仲良くできるよね。
だが断る。

「俺はさ、エースが友人としてじゃなく、恋愛感情として、好きなんだけど。むしろエースのこと抱きたいんだけど」

「……っ」

エースが目を見開いて息を飲むのがわかった。
あー、これで友人には戻れないな。まあいいか。俺、このまま自分の気持ちに嘘ついてエースの隣にいるとか、そんな器用なこと出来ないし。

「…ぉ…は………と……から…」

「え?」

エースが小さい声で何か言っているのが聞こえて、声が聞き取れる位置まで顔を近づけて耳を済ませた。

「俺はっ……ずっと前からお前のこと好きだったんだよ……っ馬鹿野郎……!」

「……っ!」

………………え。
え、
ええええなにこいつ、可愛いんですが!
俺の友人がこんなに可愛いわけがない!
というか何、ずっと前から好きだったっておま、マジかよそんな馬鹿な。ええええ。たしかに、思い当たる節があると言えばあるかもしれないけれども!でも気付かねえよ!そんなのわかるはずないじゃん男同士だぞ!?
というかこれ、もしかしてワンチャンありますか!?エースも俺のことまだ好きだったりしますか!?

「エース!!」

「はァ!?……っ」

とりあえず、その言葉を聞いて思わずエースの唇を塞いでしまったのだが、俺は悪くないと思う。
だって、エースが可愛すぎるのが悪い!
好きな人にそんなこと言われたらもう、唇に噛みつくしかないでしょう!常識的に考えて!

エースの頭の後ろに手をまわして、軽く口づける。
そして、エースが苦しくなったのか俺の胸の辺りを手で押した所でようやく唇を離した。口のなかはさっきまでエースが飲んでたお茶の味がする。麦茶だ。

「……ナナシ、おま、おま……え……!」

「……」

胸に込み上げてくるものは何もない。全然平気だった。うん、全然大丈夫だわ。むしろ可愛い。
うわー!男とキスしても気持ち悪いって思わないとか!やっぱ俺ホモだったよ!父さん母さんごめんなさい!俺ホモだった!俺の家系、多分俺で終わるわ!跡継ぎいないわこれ!一人っ子って辛いね!

「エース」

俺がそう言って真剣な表情でエースを見ると、キッドはびくりと肩を震わせた。その顔はさっきよりも更に赤くなっていてのぼせ上がっている。耳まで赤い。
ああああやばいどうしよう可愛い。

「な……なん、だ」

「俺、エースが俺と同じ男でもさ、お前とならキスしても気持ち悪いなんて思わない。本気でエースのこと好きだよ。愛してる。あのさ、俺と結婚を前提にお付き合いしてくれない?」

うおおおお言ってしまったああああ!!恥ずかしいっ!でも言っちゃう!びくんびくん!
というかこれで“ごめん今はもうお前のこと好きじゃない”とか言われたら俺、たぶんもう立ち直れないんですが。エースううう好きなんだ本気で好きなんだよこの気持ちは嘘じゃないよ!

「ナナシ……」

「う、ん。何?エース」


エースがゆっくりと口を開き、俺の方を見る。
そしてこう続けた。


「ここ教室なんだよ!人いるんだよ!デリカシーねェのか馬っ鹿野郎おおおおおおおおおおお!!」

そう叫ばれて、我に帰って辺りを見回した。まだ下校していないクラスの数名の奴等が、ポカーンとした表情で俺らを見ている。そうだ、そういえばここ放課後の教室だったわ。その中にローくんとヒロインちゃんもいた。二人とも唖然とした表情でこちらを見ている。

本当だ、やばい。やっちまったぜ。

どうも俺って、周りを気にせず前だけ見ちゃうのよね。まったくもってエースしか見えてなかったわ!許してヒヤシンス!

「お前ら!俺のエースはやらんからな!」

とりあえず開き直って、教室にいる奴等にそう指差して釘を刺しておくと「誰がお前のだ!アホ!馬鹿!」とエースに怒鳴られた。

「ねえ、エース。まだ答え聞いてないよ。エースは俺のこと好きじゃない?俺のこと嫌い?やっぱり気持ち悪いって思った?」

そう言うとエースは少したじろいだ。
あ、俺いま多分捨てられる子犬みたいな表情してるんだろうな。だって、エースにフラれたらと思うと、涙出そうだし。俺ってこんなにメンタル弱かったのかよ。知らなかったよというか知らなくてよかったよ。

するとその俺の言葉に、エースはまるで喉の奥から押し出したような声で小さく「そういうこと聞くときは……場所選べって言ってんだろ……!」と恥ずかしそうに言って、そして俺の耳元で本当に小さく、俺にしか聞こえないくらいの声で

「俺も、好き」


……。
…………………………………。


「エース」

「……なんだよ」

「式はフランスがいい?それともカナダでする?」

真顔でそう言った俺に、とうとうエースがキレて「だから!そういうことは場所選べこの馬鹿ナナシ!」と顔を真っ赤にして言うものだから、俺はとりあえずエースに抱きついてまた唇に口づけて、この胸の高鳴りが治まるのを待つしかなかった。

「エース、好きだよ」

「う……うるせェ馬鹿!」

「……いま襲ってもいい?」

「え……ハァ!?」



×××

無理やりハッピーエンド!


 

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