友人が怒ってるようだ
「ナナシ、昨日トラファルガーと帰ったのか?」
眉間にいつもより酷い皺を寄せて、かなり不機嫌そうな顔の友人に聞かれて「え、そうだけど?」と言った俺の声が少し裏返った。いや顔怖すぎんよ。なんなの?俺殺されるの?見たものが命の危険すら感じるような顔してるよお前。 というか、なにこいつ、なんでそんなに怒ってんの。
「俺よりトラファルガーと帰る方がいいのか。そんなにその作戦ってやつが大事か」
というか、一ついいですか。なんで俺エースに怒られてんの?なんも俺悪いことしてないよね。ローくんと帰っただけだよね。実際にはローくんとヒロインちゃんとだけど。 なんなのお前、そんなに俺と一緒に帰りたかったのかよ。お前は独自欲の強い女子か!ヤンデレ?ヤンデレなの?
「いやまあ、一緒に帰るって誘われたからな!断れないし!まぁ、あれだよ、誰が一緒に帰ろうとその人の勝手じゃん?」
あ、やべ最後の言葉は余計だったかも。 案の定その言葉を聞いたエースは、さっきまでの悪人面を極悪人面にグレードアップさせて黙り混んでしまった。今のエースなら視線で人を殺せる。怖いよわりと本気で。
だってそもそも、放課後の教室に残ってる数人の人からの視線が痛い。何怒らせてんだ!という視線から、こいつ今日死ぬかもな、みたいな哀れみの視線もある。 というかな、視線送るよりも助けてよ!クラスの友人はいざというときに頼りにならない。
「あの、じゃあ昨日帰れなかった分、今日一緒に帰ろうぜ!きょ、今日は俺の奢りでコーラ味のスーパーアイス買おう!」
うおお俺の小遣いが!スーパーアイス高いんだよ!でも、友情には変えられないよね。 しかたないんだ。俺よ、小遣いは月一絶対に貰えるが、友人の縁は切れればそれまでだ。諦めろ諦めも大事なんだ。
そこで教室のドアがガラリと開いた。
「ナナシと、お前は……」
なんだ、ただのローくんか。 じゃない、最悪のタイミングだよ!今、昨日君と帰ったせいでエースとゴタゴタしてんだよ! お前のせいで俺の小遣いがスーパーアイスに……じゃなくて!俺とエースの友情にヒビが入りそうなんだよ!
というかですね、エースとローくんお互い睨み合って超怖いんですがそれは。顔立ち整ってる奴って怒ると怖いよね。それだよ! 俺が怒った顔?ギャグだよ言わせんな恥ずかしい。
「ナナシに何か用か?」
「お前には関係ない」
なにこれ、こわい。なんか相当敵対してる感じがすごいんですけど。 なにこれこの二人、こんなに仲悪かったのか。知らなかったよ。
「……行くぞナナシ」
「うぇ!?うぇい!」
エースに引っ張られて教室を出る。ローくんは何も言わずにニヤニヤ嫌な笑みを浮かべていた。お前は何を企んでんだよ。なんだ、なにが始まるというのです?
というかエースさん、機嫌悪すぎィ!そんなにローくんのこと嫌いなのかよ!少し顔を合わせただけですっごい顔しかめてるし!
「……エース?」
「ナナシ」
エースは俺の名前を一度呼んだだけで、後はもう何も言わなかった。やばいこれ超怒ってんじゃん!
というか、さっきのでわかったんだけどエースが俺がローくんと仲良くしてていい顔しなかったのって、エースがローくんのこと相当嫌いだからだね。なーんだ!
まあ、性格的に合いそうにないといえばそうかもしれないしな。仕方ない。不良タイプと優等生タイプは対立する運命にあるんだな。 ローくん話したらいいやつなのに。エースったら仕方のないやつめ。
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