開店前夜
生蜂蜜。それは魅惑の食べ物である。
蜂が集める蜜により、色が琥珀色だったり白だったり、また集める蜜によってその味はどれも異なり一度食べれば魅了される。
そしてそんな蜂蜜にお熱になってしまってた娘が一人。それが莉子である。
「メイヤーレモンや蜜柑の蜂蜜は、果実が入ってないのに入ってるかのような爽やかなお味だしぃ、ブッシュブレンドは入荷した季節によって味が異なるしぃ、サザンラタのこの甘い香りがたまらない〜」
そう言いながら入荷したばかりの蜂蜜を物色する。
「今回はホワイトクローバーにしようかしらぁ」
そう言って250gの瓶を取り、指ですくって舐める。
「ああん、至福ぅ〜!これなら、きっと1番人気になるわ!!」
自ら沢山の養蜂場を回り、長い事かけてやっと開く事が叶ったお店をくるりと見回す。
外からも見えるような配置の沢山の蜂蜜入りの瓶の他に、2日前に作った蜂蜜石鹸。蜂蜜入りリップクリームにハンドクリームなどが商品として置かれ、店内はライトブラウンに統一された机や椅子や棚。レジカウンターにはクリーム色のレジスターやラッピング用品が置いてある。
淡いピンクと黄色の布やリボン、ガーランドで飾り付けされた色とりどりの装飾は、全て莉子が大好きな物を纏めたような可愛らしい作りだ。
「うん!頑張ろうぉ〜」
莉子は誰に言うまでもなく、一人でそう言うと、小さくえいえいおー、と呟いた。
開店前夜
2016/01/15