桜
『卒業式長かったね…疲れた』
「ヒメコ、寝てたでしょ」
『Σなっ!!…それより!!見せたいものが有るの』
恭弥を急かして連れて来たのは
近所の本屋さん
『見て!!これ!!このページ!!』
一冊の雑誌のページを指差す
「…(驚)」
『私の小説が入賞したの!!連載も取れそうなの!!』
「おめでとう」
『ありがとう(微笑)…あともう一つ』
恭弥の腕を引きながら本屋の裏にまわる
「ワォ、こんな所に…気付かなかったよ」
そこに咲き誇るは満開の一本桜
『私を忘れないで
桜には、そんな花言葉があるの』
私って未練がましいみたい
と、口に出した瞬間、目から熱いものが流れた。
『ねぇ恭弥、私のことをずっと覚えていてとは言わない、ただ桜を見た時に少しでも思い出して欲しいの』
「まるで桜が僕たちを繋ぐ鎖みたいだね」
『そうかも』
「一生切れない、おまけに綺麗な鎖」
今までで1番優しい顔で呟く
『Σ恭弥が笑った!!しかもキレイって…』
「ヒメコ、失礼だね。僕だって綺麗なものを見たら素直に綺麗だって思うよ。
あと、今のは笑った訳じゃないから」
桜のようにピンクに染まった頬
照れてるのも一目瞭然でわかっちゃう
『私も…!!春が来るたび、桜を見るたび恭弥を思い出すから///』
こんなに愛おしい貴方を
一時でも忘れるって方が不可能に等しい
きっといつまでも私の中には貴方がいる
「当たり前でしょ」
『えっ(驚)』
「僕を忘れるなんて許さないよ。僕は、君より未練がましくて独占力が強いみたい」
春には少し冷たい風に舞い散る桜を
二人でただ眺めていた
翌日、恭弥はイタリアに旅立った
、
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