02
ヒメコの目が見えなくなった
僕は彼女になんと声を掛けたらいいのだろう。大人達の哀れみや慰めの言葉を散々聞かされたであろうヒメコを思うと
どんな言葉も無意味にしか思えない
無力な僕は
彼女の手を握ることしかできないんだね
ヒメコの目の代わりに僕の存在を確かめさせるように彼女の手を握りつづけた
本当は恐かったから
手を離したら消えてしまいそうで
支えていないと崩れてしまいそうで
現に、
ヒメコの手は日に日に弱々しくなっていく
握り締めたら砕けてしまうんじゃないかと不安になるほど
『ねぇ雪積もった?』
「それ一時間まえも聞いてたよね。今日はもう降りそうに無いかな」
『残念。こんなに寒いのにね』
ヒメコは質問が多くなった
まるで幼い子供のように僕になんでも尋ねてくる
一日に同じ質問を繰り返すことも多い
それが僕をさらに不安にさせる
そのうち、ヒメコから思考すらも奪って仕舞わないか…
『今日はいい香りがする♪花の香り?』
「うん、よくわかったね。テニス部のみんながお見舞いにって」
『わぁホント?!凄く嬉しい(ニコッ)
でも、何の花かな。こんな寒い冬に?』
「枯れない花」
『へ?』
「触ってみて。これ造花なんだ」
戸惑いながらも優しく花に触れる
確かめるよう繊細に
『本当だ!!香りはするのにね』
「本物じゃなくてがっかりした?」
『全然。寧ろよかった。偽物なら、
いくら触っても枯れないしね(笑)』
「(クスッ)流石にそんなに触ったら壊れるんじゃないかな」
『それは嫌(泣)じゃあ毎日この花の話しをして?じゃないと存在を忘れちゃいそうだから』
「毎日か、…頑張るよ」
枯れない花
命尽きることなく
回りに取り残され風化していく
それが悲しいことは僕にもわかる
例えどんなに孤独だろうと
それを知っていても
君に望んでしまうのは
僕の我が儘
【永遠の形】
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