なんて弱いんだ

これが私の覚悟だなんて聞いて呆れる



鋭い目線とは裏腹に
手に握られている銃は微弱に震え照準が定まっていない


標的である男はただ私を見据えていた













”迷うな。
自分で決めたことに誇りを持て”

私の父は刀が好きだった
いつも楽しそうに刀を鍛えてた

私はそんな親父もこの店も大好きで
親父が死んだ日
この店の看板と共に
誇りと覚悟をしょったんだ



「なら俺が、その覚悟の篭った仕事を見てやらぁ。オメーの刀を鍛えてみろ」


高杉は客の1人で
こんなざれ言まで話してしまうほど私の心にすんなり居座っていた















「ククッ、どうしたんだァ?
覚悟決めたんなら迷うな。その程度の覚悟なんざ捨てろ」






私は迷ったことなんか無い


親父から引き継いだもう一つの家業
<暗殺業>
いつも迅速に仕事をこなしてきた
私が選んだ道だから


例え標的が
店の常連でも
昨日まで供に笑いあった仲であっても

この手を血に染めてきた



いつでも迷わない
それが私のゆいつの強味だから






『私の鍛えた刀どうだった?』

「先代に負けねぇぐらい綺麗だった」

『ありがとう。じゃあね』




もう手の震えは止まった


私は前だけを見据え躊躇う事なく引き金を引いた。




銃弾は自らの額を貫き
真っ赤な渋きが上がる




”最後に決めるのは自分の心だ、それを忘れるな”



そんな事も言ってたかもしれない

自分はこの結末を望んでたのだろうか?
この選択は間違ってないのかな?


もしかしたら高杉が好きだったのかも
恋愛感情かはわからないけど
嫌いではなかった…はず…

もうわからないや…


ただ解るのは
高杉を撃たなかった
否、撃てなかったことに安堵する自分がいること







【菫程小さき感情】
ひそかな恋心









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