『ねぇ、私の名前呼んで』
「何ですか急に…」
「いいから」
「名前さん。どうしたんですか」
「やっと呼んだ、私の名前」
「?」
「柳生くんてさ、貴女とか代名詞多いよね」
殆ど一目惚れ
ただ名前を呼ばれただけ
もちろん初めは苗字を呼ばれただけ
クラスメートなら珍しいことでもない日常会話
だけど、
初めて名前を呼ばれた瞬間
恋に落ちた、柳生くんの声に
「そうでしょうか?」
「そうだよ。私、柳生くんに名前呼ばれるの好きなのにさ」
「なっ///そんなに可愛らしいことを言われては離れずらくなるじゃありませんか」
ああ、もう放課後だもんね
柳生くんは部活に行かなきゃだ
「早く行かないと真田君に怒られるよ。いつも通り図書館で待ってるね」
「…では行ってきます。貴女と一緒に帰る時間が待ち遠しいですね」
「///よくそんな恥ずかしい台詞言えるね」
暫しの別れ、
って、そんな大袈裟なことじゃないけども
教室から出て行く柳生くんの背中を見送る
「いってらっしゃい」
あたなの声に恋して
それから
頼もしいその背中に惚れたの
教室から出て行く柳生くんの背中を見送る役目、何気に自慢。
言葉だけ聞けば何だか奥さんみたいでしょ
この『いってらっしゃい』を言うとき、私はとても得意げな気分。
これが学校じゃなかったなら、行ってきますのキスをしてもらったりしちゃって!
やー、恥ずかしい!
こんな恋愛ドラマのヒロインばりの乙女思考に成る程に貴方に恋してる
「お待たせしましたっ」
息が少し上がってる。
私のために急いで来てくれたのかな?
だとしたら凄い嬉しい。
その気持ちを素直に言えないのがもどかしい
「そんなに急がなくてもいいのに」
「いえ、紳士として大切な女性を待たせる訳にはいきませんから」
”大切な女性”
不意打ち
柳生くんの甘い台詞に顔の温度は急上昇
きっと茹ダコみたいに真っ赤だろう
柳生くんって普段は奥手で初な人なのに、口から出る言葉は糖度が高いから驚かされる。まあそんなところも好き。
「ねぇっ、手繋いで帰ろ?」
長くて綺麗な指先は柳生くんの繊細な性格が表れてる。
だけど所々に感じるゴツゴツした感触が、柳生くんの努力の証で、全部ひっくるめて大好き。
言葉足らずな私は、手から思いが伝わりますようにと指を絡める。
絡まる指の温かさに、日だまりのような大きな安心感が心に染み渡る。
とくに会話がなくても
すっごく穏やかな時間を共有できる
だけど、今日は無口過ぎるよ、柳生くん。
不思議な沈黙に柳生くんの顔を見上げると、心なしか顔が赤い気がする。
てか耳が真っ赤。
『もしかして照れてる?』
「ゆっ夕日のせいですよ///」
照れると無口になる癖
貴方のこと知れば知るほど
1つ1つ好きになっていく
握った手が離れないように
貴方の温度を感じていたくて力を込める
すると
優しい顔で握り返してくれる貴方
貴方への好きがまた1つ増える
最初に好きになったのは
″声 ″
それから背中と
整えられた指先
時々黙りがちになる癖
貴方の仕草全てが愛おしい
名前を呼んで
いつでも耳を澄ましてる
【sweet voice】
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