「好き」

俺の言葉は昼休みの教室に響いた
テニスで鍛えられた俺の声はよく通るようで、さっきまでの騒がしさが嘘のように辺りに沈黙が広がる。
が、誰に向けられた言葉かを確認すると
教室は騒がしさを少しばかり取り戻した。
それはこの告白が初めてのものではないからであって、そのせいか告白された当の本人は涼しい顔をしている。
…いや、初めて想いを伝えたときもこうだったような気がする。

『私は愛してるわ』

「皆を、だろ?」

『大袈裟ね。私はそんなに懐の深い人間じゃないわ。敢えて言うなら嫌いな人以外を愛してるの』

彼女の言葉に嘘はない
俺は愛されている、
彼女の愛する人々の一人として

「君が嫌う人なんて一人しか居ないじゃないか」

『今のところはね』

彼女が万物に与える愛は平等で
同時にとても残酷なんだ
俺の心をえぐる様に傷付けていく

「俺は君の
”トクベツ”になりたいんだけどな」

『私なんかの特別に価値なんてないわよ。もっと貴方のことを必要とする子がいるでしょ。いつも側にいるキャラメル色の髪をした可愛いらし子にでも愛を向けてあげてみたら?』

「やけに具体的だね。…それはうちのマネージャーのことかな」

『さあ、どうかしらね』

おどけた顔も可愛い、なんて場違いも甚だしい感想が浮かぶ。

「幸村君、」

『…噂をすれば。テニス部のお姫様が来たみたいね』

「マネージャーじゃないか、どうしたんだい」

「その…」

とても言いづらそうに彼女に視線を送る
もちろん彼女もそれに気付いている。

『そんなに潤んだ瞳で見つめられると、ときめいちゃうわ』

とんだ口説き文句を残して彼女は教室をあとにする。もちろん後ろのドアから

彼女はとても聡明な女性だと俺は思う。
今だって、マネージャーと俺を二人にしようとした訳じゃない。
俺がマネージャーの事を嫌っていることも知っているだろうからね。
マネージャーの用件を読み取って、テニス部の俺達が気を悪くしないよう最善の策を取っただけなんだろう。

「で、何かあったの?」

「    くんが」

そう、俺が1番欲しい
彼女の”トクベツ”を手に入れた
アイツに会わないように

世界でたった一人、彼女が大嫌いな人間
それすら羨ましい俺は
彼女の愛する人々のただの一部なのだから





博愛主義者の、
トクベツ








(わざわざ教室まで何の用かな)
(ピヨ、そう怒りなさんな)


−−−

トクベツ君の話も書きたいな
どうして嫌われたかとかはそのときに

取り敢えず人間大好き君の影響でした
サーセン




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