※幸村様入院中








『幸村君、』

「こんにちは苗字さん、毎日ありがとう」

『いえいえ、私が幸村君に会いたくて来てるだけだから』

「フフ、俺も苗字さんに会えて嬉しいよ」


俺達は別に付き合っている訳ではないのだけれど、互いに好き合っているとは思う。

でも俺は今、こんな状態だから
あと一歩が踏み出せないでいる。

もし仮に、彼女を縛り付けてしまうようなことになったら嫌だからね

だけど彼女とは繋がっていたい。
そんな都合のいい考えから、曖昧な距離を保ったまま彼女を引き留めてしまってる。
曖昧な二人の距離だけども、今は心地いい


『お花、新しくなってる』

「ああ…、さっき真田が来てたんだ」

『そっか、真田君か』

「真田がどうかした?」

『う、ううんっ!!ただ真田君がピンクの花束って予想外だったから』

「たしかに、あの顔には似合わない」

『はっきり言うね幸村君』

「本当のことだからね。それに、あいつピンクのこと桃色って言うんだ」

『…古風だね』

「真田なんかの話はもういいよ」

『酷い扱いだね副部長なのに』

「いいだろ真田だし。それに今は俺といるんだから」

『もしかしてヤキモチ?』


図星。
彼女は毎日俺のいないところで生活してて
当然それは俺の知らないことばっかりで
この部屋の外の世界に嫉妬してた。


『本当は私、真田君で安心したの』

また真田の話
これで真田の好感度が上がったとしたら
思わず、うっかり、呪っちゃいそうだ

『幸村君はモテるから、私以外の女の子がお見舞いに来ても可笑しくないでしょ。だからピンクの花をみて焦ったんだ』

「苗字さんもヤキモチ妬くの?」

『毎日妬いてるよ』

「毎日って、…真田にかい?」

『そうじゃなくて、看護師さんに。幸村君のことカッコイイって噂してたし』


俺にとって、病院の外が別世界なように
彼女にとっては此処が別世界なんだ
きっと。


「心配しなくても女の人のお見舞いは苗字さんしかうけてないよ。母さんと妹は別だけど」

『そっか、なんだか幸村君を独り占めしてるみたい』

「俺も苗字さんを独り占めしてる」


この病室の白い空間が
違う世界を生きる俺達を繋いでいて
紛れも無い、俺達の世界なんだ

まるで
二人きりの世界






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