君のいない世界
流石の俺でも傷心に浸ったりもするよ
依存?
馬鹿げてる
そんなもの愛なんて呼ばない
ただの独りよがり
一方通行な思い
言うならば、無い物ねだり
俺達はそんな不粋な関係なんかじゃない、そうだろ?
俺達の間にあるのは
もっと単純でシンプルな言葉なんだ
そう"愛"なんだよ
この一文字でしか言いようがない
この世界の言葉ではボキャブラリに乏しくて、俺達の気持ち全てを表現するのは不可能。だから俺は表情で、行動で、その一言に溢れる程の気持ちを込めたんだ
その時に見せる君の笑顔が大好きだ
周りと同じように顔の筋肉を動かしているに過ぎないのに、誰よりも暖かい
君もその単純な行動に、沢山の思いを込めていたのかな
「幸村くん、もう部活に出られても大丈夫なのですか?」
「柳生…、俺凄く健康体なんだけど?」
「身体的な意味ではないのですが…」
「俺はあいつ無しでは生きれないみたい」
「……」
「ふふ、そんな苦しそうな顔しないでよ。俺がそんなこと言うと思った?」
"君が俺の世界の全て"
そんな安っぽいラブロマンスみたいなことは言わない
俺達の生きたいと思った世界がたまたま同じだっただけで
それは、君が俺の生きたい世界の一部だったことを意味している
「ただ、隣にあいつがいない日々に慣れるのに、まだ時間が掛かりそうだよ」
君のいない世界は欠けてしまったビー玉のように、いびつな光りを反射する
それはまるで
ピースの足らないパズルのようで、
一色足らないクレヨンのよう
もし君に出会わなければ
俺はこんなにも物悲しい世界に満足していたのだろうか?
そう思うと
"俺を一人にしないで"
なんて悲劇の主人気取りな台詞は言えない
だって、この物悲しい世界に彩りを加えたのは確かに君で、俺は君に感謝してるんたから、責めるなんてお門違いも甚だしい
"俺と出会ってくれてありがとう"
この台詞が1番しっくりくるね
そう思わない?
「柳生、休憩時間終わり」
「……では、私は練習に戻ります」
「俺も戻るとするよ。気の抜けた練習をしてる奴らに特別メニューをプレゼントしないとね(黒笑)」
「そうですか。(お気の毒に)」
「もちろん柳生の分もあるよ」
「……」
君のいない世界でも
俺は変わらずテニスばかりしているだろう
周りも変わらず練習に励むし、そのうち卒業して大人になっていくんだ
世界は、何一つ狂う事なく時間を進めて行くのだろう
だけど君からのメールが来ない俺の携帯はとても無口になったんだ
設定した君が大好きだった曲が鳴らないのは、ちょっぴり退屈かな
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