「苗字は本当に変わってるよね」

現に今だって、俺が着替えてるのに関わらず慌てるそぶりも見せない。勿論、照れている様子もなく平然と部誌を書いている


『それはありがとう』

「…今の、褒め言葉に聞こえた?」

ほら、こう言う所も他の女子とは違う。
普通なら厭味に取っても可笑しくないのに
苗字に至っては少し嬉しそうにも見える。もしかしたら救い様のない程の天然なだけかもしれない。


『今の発言は私を蔑んでいたの?』

「まさか。」

『そう、つまり幸村君は好きな子をイジメてしまうタイプなわけね』

目が離せない。
胸の内を覗き込むような目線
少しでも気を緩めたら、全てを見透かされてしまいそうになる。

「好きな子?それじゃあまるで俺が苗字を好きみたいな言い方だね」


何処か抜けてるくせに、周りの反応に敏感で頭が切れるし注意力がある。
そのせいか時々とても鋭いことを言う。
まあマネージャーとしては一流だけど。


『あら、違った?』

「うん違った」

『人間観察は得意な方だったのに』

「ふふ、俺の方が一枚上手だったってことだね」

『残念ね。幸村君には敵わないわ』

全くもって残念そうじゃないし
寧ろ楽しにクツクツ笑ってる。悔しいな。

「残念?それは君の読みが外れたことに対して?それとも俺が君のことを好きじゃなかったからかい?」

『今日はやけに絡むわね』

「そうだね。いい加減ハッキリさせないと柳が煩くて」

『蓮二が?奇遇ね、私も似たような事を言われたわ。聞き流していたら本の角で頭を殴られそうになったのよ』

「…やっぱり、2人とも仲が良いんだね」

『幼なじみの腐れ縁よ』

「そう。……で、俺はハッキリさせようと思うんだ。だから暫く俺の話に付き合ってくれるかい?」

『いいわよ。部活までまだ時間もあるし問題はないわ』

「ありがとう。早速だけど、さっきの質問に対する答を聞かせてくれる?」

『んー…。両方かしら?後者の方が少し大きいわ』

「つまり、苗字は俺に好かれたいってこと?」

『違うわ』

「俺の予想も外れたか…。苗字には読心術が使えないから苦労するよ」

だからこそ君に興味がわいて
いつしか惹かれてたんだけどね


『私も、幸村君が何を考えているか分からないことが多いわ。きっと私達はお互いを知ろうとし過ぎて自分の腹のうちを隠し過ぎているのよ。つまり、探り合いからは本音が見えないってこと』


確かに。相手を知るには先ず自分からってことか…。なら、君が推測し間違えた俺の気持ちを教えてあげるよ


「俺は苗字のこと愛してるんだよ」

『私は幸村君に愛して欲しかったのよ?』


変わり者二人



『予想が外れて嬉しかったのは初めて』

「俺も。愛してるよ名前」

『私も』



変わり者の彼女に、こんなにもどっぷりと惚れ込んでる俺は…
相当な変わり者かな?



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二人は出会った頃から両思いで、ズルズル平行線のままな感じ。痺れを切らし始めた部員を見兼ねて柳の出動(笑)





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