子宮の中であたためる





あぁ、なんて表現すればいいの


閉じられた双眼は切れ長な曲線を描き、そこから伸びる睫毛は彼の髪と同じ優しい色をしていた。
そう、美しいのだ。
それは周知の事実であり、何を今更考える必要がある。だけど、美しいからこそ、頬に走る新鮮な切り傷が映える。彼の体に付いた無数の傷は、彼の美しさを何か別のものへと至らしめているように思える。

どうやら眠ってしまったようだ。
課題の途中で居眠りしてしまうなんて(と言っても彼は既にレポートを書き上げてしまっているので、これは私の課題でしかないのだけれど)、ホグワーツに入学して以来始めて見る光景に少し驚く。明日は何か起こるんじゃないかしら、なんて、最も原因に成りうる2人組を思い浮かべては苦笑いが漏れる。


「…リーマス、風邪ひくわよ」


そっと呼び掛けてみるけれど、当人はぐっすりと寝入っているようで反応はない。
まだ満月が終わったばかりだ。疲れが取れ切れてないのね。
だけど、ここは11月も半ばの談話室
いくら暖炉に火が焼べられていると言っても、風邪をひいてしまう。
起こして仕舞わないように細心の注意を払いながら、彼の体をソファーに横たえる。


「…夕食の前にもう一度起こしにくるからね」


確かに彼へ向けた言葉であるが
彼の耳へ届かないようにひっそりと告げ、談話室を後にした。もちろんブランケットを被せるのも忘れずに。



さて、課題のレポートの提出日にはまだ余裕があるんだけども。残り4割ってところかしら?ここまで来たら完成させたい。助言をくれるリーマスはお昼寝中、なら行く場所は一つしかない。
私は90度方向転換をし図書室へ続く廊下に足を進めた。






「んっ…っ、はぁー」
わからない。どうして学者はこうも難しい言葉を使いたがる。何度読んでも解り辛い本の解説から目を外し、伸びを一つと、首を左右に捻って席を立つ。


「もうレポートは終わったの?」

「ッリーマス?どうしてここに?」

「課題ごと君が居なくなっていたから、ここだろうと思って」


私が談話室を後にしてから、まだそんなに時間が経ってないはず。


「もう少し眠っていたらよかったのに」

「うーん、目が覚めちゃってさ。やっぱりナマエの隣が一番落ち着くよ」


少し憂いを帯びて伏せられる目線に、不健康な程に白い肌。
なんだ、この美しい生き物は


ああ、なんて表現すればいいの


彼が私の隣で穏やかに過ごせるのなら、いつだって隣を空けていよう。


ああ、言い表しようのないこの感情
これが愛しいってことなのかしら


子宮の中に包みこんで、
あたためてあげたい





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