進展




これは、現実なのだろうか
大袈裟かもしれないけど泣きそう







◇◇◇◇


「おはよう」

『おはよー』

いや、別に自惚れてたつもりはないし、彼女が俺の誕生日を知らないことは、予想の範囲内。

だけど、
俺の周りに群がる女子を見て
机に高く積み上げられた贈物を見て
それでも彼女は気が付かないのだろうか。


今日はきっかけを作るために、俺から挨拶をしてみたんだけど、返ってきたのは普段と変わらない気怠そうな声と無表情。
端から見れば特に変わりないクラスメート同士の会話。

だけど、初めて交わした挨拶な訳で
つまり俺と彼女はクラスメートの中でもかなり関わりがないことを表している。

彼女は普段挨拶を交わさない人に
いきなり挨拶をされても、気にならないのだろうか。

それとも俺だからなのかもしれない
こんなに露骨に祝われてるのに誕生日に気が付かない程俺に無関心なのだろうか。


春、入学式で初めて彼女と出会った
今までに出会って来た女の子達と全く逆の反応をする苗字さんに俺は興味を駆り立てられた。
それが恋に育つのに時間は掛からなくて
気が付いたら苗字さんを見てて
声を聞いただけで頬が緩む
典型的な恋の症状


春休みの前日、俺は自ら歩み寄ってみることにした。


「苗字さん、またクラス一緒だといいね。じゃあね」

『うん、幸村くんも部活頑張ってね。バイバイ』

やはり彼女はいつも通りで、俺の中に彼女の鈍感説ができた




◇◇◇◇◇

それが去年の話
また同じクラスになれたって分かったときは軽くガッツポーズを決めちゃったよ。

あれから俺は、毎日彼女と挨拶を交わすようになたし、彼女から挨拶をしてくれるようにもなった。


で、冒頭に戻るんだけど
今日で14回目の誕生日を迎えた俺は、人込みで中々教室に辿り着けなくて気が滅入ってたんだ。
でもそんなの一瞬で吹き飛んだ

なんたって彼女の口から、待ちに待った言葉が紡ぎ出されたのだから。


誕生日おめでとー


明らかに、たまたま持ってただけであろうチロルチョコと一緒に


「クス、好きだよ。ありがとう」

『そうなんだー。私もチロル好物だよー』


進展

どうやら彼女の鈍感説はあながち間違ってはいないようだ。
なら、もう一歩前進。


「ねぇ、マネージャー業に興味ない?」






−−−−−−−−−−−
幸村様の片思い
中1〜中2の終わりにかけての話
はい、時間枠無視です
幸村様ぴんぴんしてます。健康です。







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