「で、ゼリーを作ったのは山岸なんだな?」 「はい…」 ダメでしたか、と風花がおずおずと訊ねると「ダメっつーか…」とやや困惑気味に荒垣がそれを見た。なんだか透明感のない――黒いゼリー状のものがキッチンに置かれている。風花はとにかく体に良さそうな黒酢や風邪薬を混ぜたりしたのだが、何をどうしたらなのか本人もわからぬうちにできてしまったのがこのゼリーだ。 このゼリーを真宵に届けようとしたのをキッチンに入ってきた荒垣が止めたのだ。 「……ゼリーなら手伝ってやるから支度しろ」 「! はいっ」 「いいか、他の奴には絶対に言うな。いいな?」 「り、了解ですっ」 支度を終えた山岸がキッチンに入ってくると、荒垣はすでに準備をしていた。以前も思ったが本当に手際がいい。 「えと、材料にカルピスですか?」 「他は葛粉にハチミツ、粉寒天だな。サクッと済ませるぞ。俺が横で見てやるから山岸、お前がやれ」 「はいっ」 「まず鍋に葛粉を大さじ2杯入れてから、水の2カップ分を全部使わずに少しで……まて、何で測るつもりだ」 「え、水を」 「カップはそこに置いただろ! 適当にマグカップで測るなっ。大さじはそれだ、小さじも隣においてある」 「は、はいっ」 「……返事は満点なんだがな。とにかく、葛粉を測る。水は少しで溶かせ」 「溶けたら、残りの水を入れろ。あと、ハチミツを小さじ2杯、カルピスはカップの半分、粉寒天は1グラム入れた奴があるからそれを入れろ」 「えーっと、ハチミツを…」 「小さじだ。それは大さじ。さっき使っただろ」 「はい……カルピスは半分で、粉寒天、っと」 「弱火で焦げないように掻き混ぜろよ」 「透き通って底が見えてきたら、カップに入れるぞ」 「大分トロトロになるんですね〜…あ、いい匂い」 「……カップはこれでいいだろ、ほら、入れろ」 「あ、もう入れていいんですね。結構時間かけるのかと思っちゃいました」 「……だから黒かっ、…いや、いい。とにかく、入れろ」 カルピスの白い色に染まったゼリーの液体を小さなガラスのコップに分けていく。入れたコップはすぐに冷蔵庫に入れるわけでないらしく、あら熱をとるまで待ってから入れるらしい。 「荒垣先輩ありがとうございます。真宵ちゃん、きっと喜んでくれますね」 「…それはいいけどよ、料理するならもっと落ち着いてしろ」 「はい、頑張ります」 「あとは一時間か二時間冷やせばできるだろ。俺は先に出る」 「はいっ」 片付けは任しておいてくださいね、と風花が言うと荒垣は怠そうにキッチンを後にした。 カルピス・ゼリー (ゼリーはネット検索すれば出てきますので参考にしてみてください。見た目も美味しそうな真っ白ゼリーです) |