転校の書類手続きした奴、後でシメる。ぜったいにシメる。 「いたか!?」 「いや、見失った!」 「すばしっこい奴だなッ」 「生徒会の威信にかけても見つけだせ! 風紀委員会に出し抜かれるなよ!」 けど今捕まったら私自身がシメられそうな気配だったので、見知らぬ相手に向ける怒りは一旦押し殺して、ついでに気配も殺しながら私は鴉乃杜学園の校庭に隠れていた。 カミフダと呼ばれるものを集める秘密のエージェント。 その封札師になった私の初任務が、この新宿にある鴉乃杜学園敷地内で感知されたカミフダを確認、そして発見次第に回収することだ。 ペーペーであろうがベテランであろうが(もっと言えばジェンダー関係なく)封札師自体が極秘にされているため、必要経費は自腹という非常にシビアな任務であるが、速やかに行えるようにと鴉乃杜学園の学生身分証を手続きしてもらえる。 「ことになってたはずなんだけと……」 今の私は寇聖高校に入学して真っ赤なセーラー服に袖を通し、コソコソと泥棒まがいの行動を強いられている。 まあ、堂々と校門くぐって、生徒会の職質まがいから逃げ出してしまったから此処まで大事になったとも言えなくもないが…。 「――悪くないわよ」 そう、私は悪くない。 悪いのは、転入届を手違えた奴と世間に受けの悪い寇聖高校のド派手な制服、そして軍隊なみにしつこい鴉乃杜の連中だ。 いい加減茂みのなかから抜け出したいと思いながら、私は理不尽な怒りをぶつける相手をフツフツと増やしていった。 この騒ぎを聞きつけた、喧嘩慣れした男子学生に私が見つかるまで後10分。 喧嘩をしていた私と男子学生を発見した生徒会役員が女帝を引き連れるまで後15分。 そして――― 20120720修正 |