おにぎりパーティ2 | ナノ

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 美鶴は感激していた。
 日本人の食文化において語らざるは得ない――おにぎり。

 白米(特に炊き出ちが良いらしい)の中に具を入れて、三角の形(基本形らしい)に握って食べるというシンプルでありながら、具を何にするか、海苔を巻くかトロロ、ふりかけをかけるかとバリエーションは幅広く、可能性は無限大だ。

 とはいえ侮りがたし。
 湯気立つ白米を握ろうとワクワクしていた美鶴だったが、その熱さに早々白旗を挙げる羽目になってしまい、見兼ねたゆかりが握ってくれたのだが、

「…せっかくの機会だと言うのに、自分で握れないのは残念極まりないな」

 シャケのオニギリを頬張りながら美鶴が悔しそうに呟くと、ゆかりが「そんな大げさな…」と言った。

 彼女の手のなかでコロコロとリズムよく白米のボールが三角形になっていく――今の自分では三角形にすら出来ないかもしれない。

「予習でもしておくべきだったな…」
「は、予習っ!?」
「私ではそれだけ美しく三角形にはできないだろうしな」
「………あー、そうですか。まあ、これくらい先輩も練習すればできますよ」

 そう言って、海苔の佃煮が入ったオニギリを渡してくれたゆかりのうっすら頬の赤い。

「……まるで、梅干しみたいだな」
「はい?」
「いや、次は梅干しがいいな、と思っただけだ」



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 おにぎり一つにそれだけ感動できる人間はそう多くないだろう。美鶴の反応にそう思っていた真田だったが、順平が「……真田サン」とかけて来た声には非難じみたものがある。

「…俺に振るな」

 大体、シャドウ討伐を目的に集まった寮だ。肉親がいないのを引け目ではないにしろ、思うところがあった真田が、あえて美鶴の普通と少し違う私生活に口を挟むことはなかった。
 それをどう捉えたのか、順平は納得したように一人頷くと、

「まあ、真田サンは根っからの個人プレーな人ですもんね」
「………」
「ああッ、俺のオニギリにプロテインがッ!! アンタ、何してるんスか!?」
「デラックス握りとやらのグレードを上げてやっただけだ」
「アンタそれ絶対違うってわかってるでしょ!?」

 もう食えねえよ、とうなだれる順平に真田はプロテインまみれの自分のおにぎりを頬張った。
「子どもの喧嘩だ…」と呟いた天田の声はスルーだ。



おにぎりパーティ
side:美鶴と真田